地元の食べ物は美味しい。これは、当然のことです。産地からの輸送時間が短いため、鮮度もいい。そして、ずっと食べなれているからです。


極めて当たり前のことなのですが、なぜかそこで、比較をしてしまう。


例えば、私の地元は、鯛がとれません。なので、地元の白身魚を称賛するとき、よく、こう言うのです。鯛なんかより、よっぽど美味しいと。


そうではないのです。こちらで売られている鯛と比べれば、なのです。


私も、なぜ鯛をそこまで有り難がるのか、全くわかりませんでした。私の地元で売られている鯛は、ほぼ全て養殖もので、油が強く、ふにゃふにゃした、ただの白身魚でした。


四国に行ったとき、生の鯛を使った鯛めしを食べて愕然としました。私の地元で食べている鯛と、全く別物だったからです。そして、そこまで高いものでもありませんでした。


ならば、これを地元の家族に食べさせられないものかと思い、翌日、デパ地下に行き、鯛がないか聞いてみました。明日、帰ると言うと、そこの鮮魚売り場の責任者の方は、こう仰いました。


「お客さん、明日の午前中に、もう一度ここに来られますか?間違いないものを、用意しておきますよ」と。


翌日、空港に行く前に、もう一度そこに伺うと、売り場ではなく、バックヤードから、素晴らしい鯛を見せてくれました。今朝、あがったものだそうです。これを、発泡スチロールに保冷剤とともに詰めて頂きました。しかも、「えっ?」というほど安いのです。瀬戸内の天然ものの鯛が、です。


地元に持ち帰り、馴染みの魚屋に事情を話して、その日のうちに、お造りにして頂いたのですが、魚屋の親父さんから、こんないい鯛は、ここ最近見たことがないから、出汁も素晴らしいものが出るので、あらも持ち帰るように言われました。


まだ生きていた父母と、私の家族みんなで、鯛を食べましたが、子供達の目の色が違いました。お刺身は勿論なのですが、あらのすまし汁が、抜群なのです。


もし、私の地元の魚が、例えば東京で売られていても、そこまで美味しいものではないでしょう。当たり前のことです。地元のものは、地元で食べるのが一番なのです。