いま、WOWOWでは、松田優作特集が放送されておりますが、何十年ぶりに、「ア・ホーマンス」を、見ることが出来ました。


松田優作が、自ら監督した作品で、当時ARBのフロントマンだった、石橋凌を、実質の主演に起用いたしました。


公開当時、確か、名画座で見たのですが、ラストで、なんじゃこりゃ?と、ひっくり返った記憶があります。役者が監督をやると、独りよがりなものになることが多々ありますが、その典型だと感じました。


それが、改めて見ると、これが面白い。確かにわけのわからない描写はありますが、かなり革新的です。当時の私は、それについていけなかった。


クレジットのトップは松田優作ですが、実質的な主演は、石橋凌に任せております。ほぼ演技経験のない彼が、実に良くやっております。石橋凌は、松田優作のことを、生涯の恩人だと公言しておりますが、役者の道を開いてくれたからでしょう。


出色なのは、敵役を演じたポール牧で、こういうヤクザは一番怖い。眼が笑っておらず、淡々と哲学的なことを話しながら、底知れぬ怖さを見せており、こういう役にキャスティングしたのは、慧眼だと思います。


「野獣死すべし」や「蘇える金狼」は、松田優作の気合いが、空回りしている感さえありましたが、この作品では、肩の力が抜けており、それが逆に良かったと思います。


「ターミネーター」や「ブレードランナー」の影響を、指摘する声もありますが、私は、「ペイルライダー」もあると思います。


松田優作、生涯ただひとつの、監督作品です。一見の価値はあると思います。