WOWOWで、「ヘルドッグス」が放送されたため、原田真人監督の特集が組まれました。


そのなかで、一際目を引いたのが、役所広司主演の「KAMIKAZE  TAXI」 です。


今回は、インターナショナルバージョンとやらで、オリジナルよりも短くなっております。私は、オリジナルも見ておりますが、自己啓発のシーンが、結構苦痛でした。それが、今回のバージョンでは、すっぱりなくなっているため、逆に見易くなっておりました。


役所広司は、ペルーから出稼ぎに来ているタクシー運転手です。偶然、おきゃとして、高橋和也扮するチンピラ、達夫を、客として乗せるのですが、彼は自分が所属している組と関係がある、政治家の土門の隠し金を強奪して、逃げている途中でした。


この映画のポイントは、三つあります。ひとつは、高橋和也です。この頃、彼は男闘呼組を解散したばかりでしたが、役所広司を相手に、荒削りですが、実に若々しい芝居を見せます。まさに、躍動しております。


次に、新しいスタイルのヤクザを演じた、ミッキーカーチスと矢島健一です。このふたりが、実にいい。どちらもやることは、普通のヤクザで、いざというときは残虐なのですが、普段は実に飄々としており、ミッキーカーチス扮する組長の亜仁丸は、お忍びでジャズを演奏しており、役所広司扮する寒竹に、不思議なシンパシーを感じております。


矢島健一扮する石田は、組長の右腕なのですが、「俺は、立教出ているんだ。日本のアイビーリーグだぞ」などと、妙なところにプライドがあります。ヤクザのセリフなのに、洒落っ気があるのです。


私が、矢島健一という役者を、初めて意識したのがこの作品で、普段は官僚などのキャラが多いのですが、わたくし、実はファンです。先日まで見ていた、「想い出づくり。」で再発見して、余計にそう思いました。


最後のひとつが、歴史の改竄と美化で、内藤武敏扮する極右の政治家、土門は、自身も特攻隊の生き残りを公言しておりましたが、そこで寒竹の父親と一緒でした。


土門は、これから特攻に向かう隊員に、覚醒剤を飲ませていたのでした。若者を死地に追いやり、自分は平然と生き延びていたのです。


そんな土門が、達夫の知り合いの女性に対して、Sの気が出てぼこぼこにしてしまい、そのことに怒った達夫の彼女が、亜仁丸に強く訴えたため、逆に殺されてしまいます。


そのことに憤った達夫は、チンピラ仲間と一緒に、土門の家を襲い、大金を強奪するのですが、あっさりと正体がばれてしまい、仲間が次々と殺されるなか、何とか寒竹のタクシーで逃げ延びて、逆に復讐しようとするというストーリーなのですが、役者のバランスが抜群なため、全く退屈いたしません。


なぜ、タイトルが、「KAMIKAZE  TAXI」なのかも含め、ぜひご覧になってみてください。