今から、約五年前に、「想い出づくり。」の最終回については、一度書きました。やはり、再放送を見ての感想です。


今回、第三話から見ることが出来ましたが、山田太一さんが亡くなり、さらに私自身が年齢を重ねることで、さらに感慨深くなりました。


森昌子、古手川祐子、田中裕子の三人は、それぞれの幸せを掴みます。色々と紆余曲折がありましたが、全員結婚いたしました。


放送当時も、大変話題になったのですが、オープニングのクレジットの一番最後に、役名が青山信一として、唐突に根津甚八の名前が出てまいります。


当然、見ているほうは、何のこっちゃと思います。それまで、影もかたちもなかったのですから。


宿泊しているホテルの部屋に戻ろうとしたとき、後ろをつけてきた男に、田中裕子扮する香織は教われます。


必死に抵抗しているときに偶然居合わせ、助けに入るのが、青山信一です。根津甚八が理想の男性と公言していた香織ですから、そっくりの男性が現れれば、それは驚きます。本人だと勘違いするくらいですが、何せ本人が演じているのですから、似ているも何もありません。


しかも、根津が青山、甚八が信一ですから、からかわれていると思っても、仕方ありません。しかし、彼は、桶川在住の小型飛行機の教官でした。


当時、人気絶頂の根津甚八が、よく受けたと思いますが、自分のそっくりさんの役を、明らかに楽しんで演じております。


それぞれが、それぞれの道をみつけ、それが幸せかどうかはわかりません。結婚しても、三人みんな共働きです。


けれど、出会った時とは、三人とも大きく変わりました。結婚したこともそうですが、何より、何でも話し合える友達が出来たからです。


ただ、見ていた時は、三人の女性と同じくらいの年齢だったのですが、今ではなんと、父親たちと同世代になっておりました。


改めて感じたのは、山田太一さんの脚本の緻密さです。微妙な心情の揺れ、喜び、哀しみ、怒りなどを表す、紡がれる言葉の数々。


登場人物のなかに、特別な人間は、ひとりもおりません。スーパードクターも、不治の病を抱える患者も、難事件を解決する天才刑事も、殺人鬼も出てまいりません。本当に、そこらにいる人達ばかりです。


にも関わらず、なぜ、誰もがこんなに魅力的なのでしょう?なぜ、こんなに面白いのでしょう?


山田太一さんをリスペクトする岡田惠和さんが、著書のなかで書いておりましたが、「想い出づくり。」のことを、脚本家同士でよく話す

のだそうですが、一番好きなのは、三人の女の子が、ホテルの一室に立てこもり、破損してしまった部屋の弁償について、父親たちが話し合うシーンなのだそうです。


最初こそ冷静に話しているのですが、だんだんそれぞれの性格が出てきて、最後には掴み合いになるというもので、それを、児玉清、佐藤慶、前田武彦という、百戦錬磨の面々が大真面目に演じると、こんなにも面白くなるのです。


佐藤慶は、娘たちに理解を示そうとする児玉清に向かって、「田舎のえせインテリが」と罵倒し、揉み合うふたりに向かって前田武彦は、「襖でも壊して、また弁償が増えたらどうすんのよ」とお金の心配をするという、それぞれの性格がもろに出てきて、抱腹絶倒になるのです。


二回めまでを、見損ねたのは残念ですが、のこりは全て録画いたしました。こういうドラマの再放送は、大歓迎です。


※このことは、一度書きましたが、最終回まで見直して、改めて思いました。


田舎の叩き上げの小金持ちを、加藤健一が怪演しましたが、このドラマをリメイクするなら、やはりオードリー春日がぴったりだと思いました。もし実現したら、大人気になるでしょう。