NHKのBSで、黒澤明監督の傑作、「七人の侍」が放送されました。

初めて見たのは、いつだったでしょう?もう、相当昔のことです。


私は、アメリカで購入した、電話帳みたいな厚さの、世界中の映画を、星の数で評価した本を持っておりますが、「七人の侍」は、星五つ、すなわち満点でした。解説には、「masterpiece」とありました。すなわち、傑作です。


改めて見ると、忘れていたところや、新たな発見、色々あります。私など、先に、「荒野の七人」を見ており、そちらでも充分面白かったのですが、この映画は別格です。


志村喬、三船敏郎、宮口精二、木村功、加東大介、千秋実、稲葉義男の、七人の浪人が、農村を襲う野武士から、村を守るために、農民から雇われます。


農民たちに、闘いかたを教え、野武士たちと壮絶な死闘が繰り広げられますが、侍たちも無傷ではすみませんでした。


侍たちの指揮をとる、志村喬扮する勘兵衛の凄み、三船敏郎扮する菊千代の野性味、寡黙な剣豪の宮口精二など、それぞれのキャラクターも際立ったており、その後の世界中の映画にも、多大な影響を与えました。


私は、勘兵衛が、托鉢の坊主になりすまして、子供を人質に立てこもった浪人を殺すシーンが、初めて見た時も、ぞくっとしたのですが、ここ、今見直すと、ストップモーションが使われているのです。そう、もろ、ペキンパーなのです。


ペキンパーは、「ワイルドバンチ」で、「七人の侍」にインスパイアされ、逆転の発想で、野武士側の視点から描いているのですが、ひょっとすると、後に、ペキンパーの十八番と言われるストップモーションも、ここから引用したのかもしれません。


最後の、浪人たちと、野武士の、まさに死闘は、どしゃ降りの雨のなかで繰り広げられるのですが、この時、黒澤監督は、叩きつけるような雨にするため、水のなかに水飴を混ぜたというエピソードも、後に知りました。何せ、私ですら産まれる前の映画なのです。特撮など、あるわけがないのです。


フランシスフォードコッポラ、ジョージルーカス、スティーブンスピルバーグ、ジョンミリウス、名だたる名監督が、その影響を公言している傑作を、日本人が見ていないなど、あり得ないと思います。


そりゃ、旧さを感じるところはあります。ありますが、この偉大な名作を見ないのは、あまりにもったいない。


三時間を超える作品ですが、本当に退屈いたしません。日本には、かつてこんな天才がいたのです。