身内を、同じような状況に預けた事のある方々にとっては、かなり身につまされる内容ではあります。


岸井ゆきの主演の、「お別れホスピタル」です。あの、「透明なゆりかご」と同じく、安達奈緒子の脚本です。


私も、親を入院させた時まで、よく知らなかったのですが、療養型の病院というのは、基本、治療の見込みがなく、家では面倒が見られないような方を、入院させるところで、だいたい死ぬまで出られることはありません。私の親もそうでした。


岸井ゆきの扮する歩は、総合病院のなかの、療養部門の看護士です。そこには、末期の癌患者や、重度の認知症患者などか、入院しております。


私が驚いたのは、初回の15分くらいの間に、バタバタと患者が亡くなったことで、それが、丘みつ子、松金よね子、白川和子と、結構な女優ばかりでしたから、いずれは亡くなるにせよ、もう少し看護士である歩とのやり取りがあると思っていたのです。それが、あっという間でした。一瞬で、賑やかだった病室に、誰もいなくなるのです。


そこに、松山ケンイチ扮する医師、広野が、療養部門の担当になります。広野も、何かを抱えているようです。


歩も、小野花梨扮する妹が、引きこもりになっているのですが、麻生祐未扮する母親に面倒を任せ、家を出ておりました。


そんな時に、古田新太扮する本庄が、入院します。彼は末期癌で、家族からも見捨てられておりました。ある日、彼が事件を起こします。


入院している患者たちの描写が、かなりリアルです。そんな患者たちのケアをする看護士たちも、岸井ゆきのの他も、仙道敦子、内田慈など、なかなか癖の強い面子が、これまたリアルです。


なので、見ていて楽しいドラマでは、決してありませんが、色々と考えさせる内容です。


特に、泉ピン子扮する、大腸癌患者の夫が、癌は治ったにも関わらず、重度の認知症になってしまい、性格も攻撃的になってしまうのですが、別の病気が発症し、ある決断を迫られます。


これに近いことは、私にもありました。もう治療はしなくてよいとするか、例えどんな状態になっても、生きてさえいればよいとするか、決して完治することはないのにです。


空いたベッドには、また次の患者が入院してまいります。面白い、などといっては失礼ですが、今作られるべきドラマだと思います。


※歩の妹を演じる小野花梨は、最初誰だかわかりませんでした。彼女は、「カムカムエヴリバディ」、「罠の戦争」と、見てまいりましたが、かなりの逸材です。相当巧いです。