今朝の「ブギウギ」を見ていて、趣里という女優のポテンシャルを思い知りました。
趣里扮するスズ子は、女の子を出産いたしますが、同じ頃、水上恒司扮する愛助は、結核でこの世を去っておりました。
そのことを、黒田有扮する坂口と、近藤芳正扮する山下は、出産の直後に知っておりましたが、スズ子には言えずにおりました。
数日後、これ以上隠してはおけないと、山下はスズ子に、愛助の死を伝えます。その時の、スズ子の表情が素晴らしい。泣き叫ぶのでもなく、ただ無言のまま、魂が抜けたような顔を見せます。
その後、愛助からの手紙を受け取り、子供の名前を愛子とつけてくれたことを知り、泣き続ける愛子の声を聞き、我に帰ります。
ラスト、夢のなかでしか、親子三人水入らずの時間はありません。そこに、スズ子の唄う、「ラッパと娘」が流れます。ただし、その歌は、いつもの弾けるような歌声ではなく、まるで鎮魂歌のように、唄われておりました。
ここの演出は、まいりました。朝から泣かせないでください。縁側で、シャボン玉を吹きながら、本当に幸せそうな三人は、現実には一度もなかったのです。
時を同じくして、キネマ旬報の各賞が発表されました。作品賞は、阪本順治監督の、「せかいのおきく」、そして主演女優賞が、なんと!「ほかげ」の趣里でした。
かつて、父親の水谷豊も、「青春の殺人者」で、主演男優賞をとりました。親子、ましてや、父親と娘で受賞したのは、記憶にありません。
「ほかげ」は、塚本晋也監督作品で、戦後すぐの日本を描いたものですから、「野火」同様、リアルな作品だと思います。そこで、主演をつとめたのですから、趣里は立派な主演女優です。
※「ブギウギ」の次週のタイトルは、「東京ブギウギ」です。予告でそのことを謳いながら、趣里の歌は、一切流しませんでした。このドラマのスタッフは、よくわかっております。
ズキズキ、ワクワクです。