何度も書きましたが、「想い出づくり。」は、本当に素晴らしいクオリティです。脚本家、山田太一の脂が乗り切っている時の作品だけのことはあります。


これ、「ふぞろいの林檎たち」を発表する直前なのですね。「ふぞろい」は、私の大学時代とリンクしておりますので、良く覚えております。この二作と、「男たちの旅路」や「獅子の時代」や、「早春スケッチブック」が、ほぼ同時期というのは、今思うと、神業としか思えません。


全て、オリジナルなのですよ。


私は、これらのドラマに、二十代の頃に出逢いました。そりゃ、ドラマにどっぷりはまるわけです。


改めて気付いたことがあります。


このドラマの、クレジットのトップは、森昌子なのです。そして、森昌子の両親が、前田武彦と坂本スミ子、古手川祐子の両親が、児玉清と谷口香、田中裕子の両親が、佐藤慶と佐々木すみ江なのです。なんという家族構成!もう、見事なキャスティングです。


この間、矢島健一が出ていることは書きましたが、田中美佐子も、まだ田中美佐の芸名で、出てまいりました。平田満も、ほんの脇です。


何せ、1981年の作品です。今から43年も前なのです。それでいて、この一時間の濃さはなんなのでしょう?


山田太一さんの脚本の真骨頂は、台詞回しです。さりげない会話、ヒリヒリした会話、全てがぞくっとします。さりげないなかにも、すっと毒が差し込まれているからです。


いま、大量のドラマを録画しておりますが、私が真っ先に見るのが、「想い出づくり。」です。不世出の脚本家の、完璧に構成されたドラマを、ぜひ、ぜひ、ご覧ください。


※男性と付き合った経験のない森昌子、いい加減でだらしない男に、結局惹かれてしまう古手川祐子、そして、明らかに自分に好意を持っている、上司のことを自ら誘い、三人知っているからめんどくさくないと囁く田中裕子。


キャラクターの設定も、見事としか言い様がありません。