BS12で、なんと!高倉健の、「冬の華」が放送されました。高倉健特集のひとつで、初めて、映画で倉本聰と組んだ作品です。
この映画は、池上季実子と共演しておりますが、倉本聰さんは、この役を、山口百恵で当て書きしておりました。倉本さんは、山口百恵の大ファンだったのです。
高倉健と山口百恵。まさに、夢の共演です。しかし、東映の看板スターと、東宝の看板スターです。しかも、いくら倉本聰とはいえ、バリバリのヤクザ映画です。東宝が認めるわけがありませんでした。
それで、起用されたのが、池上季実子でした。しかし、これはやはり、山口百恵で見たかった。その代わりといってはなんですが、この映画は、男祭りです。もう、ぞくぞくするほど男臭い。
高倉健扮する加納秀次は、組を関西に売ろうとした、池部良扮する松岡を殺し、刑に服します。
十数年経ち、刑期を終えて出所すると、時代はがらりと変わっておりました。ここまでは、よくある東映映画と変わりません。
組長は、シャガールをこよなく愛する好好爺になっており、組の幹部は、息子の大学受験やカラオケ、外車に没頭するなど、表向きは平和そのものでした。
しかし、実際には、関西の組織が、商社の名前で進出しており、挑発を繰り返しておりました。そんなときに、よりによってカラオケのマイクの奪いあいで、関西の組員を殺してしまい、抗争のきっかけを作ってしまいます。
秀次が殺した松岡には、池上季実子扮する洋子という娘がおりました。今は高校生で、秀次は、田中邦衛扮する、腹心の南に頼み、ずっと洋子の援助をしておりました。自分を、ブラジルのおじさんと偽って。
組には、かつての松岡のように、関西に通じる幹部がおり、秀次は十数年前と同じ状況に追い込まれていきます。
1978年の作品ですから、北大路欣也ですら、まだ30代のころの作品です。組長の息子役で、若と呼ばれておりました。
他に、田中邦衛、三浦洋一、夏八木勲、藤田進、小池朝雄、峰岸徹、小林稔侍、大滝秀治、寺田農、山本麟一、今井健二、岡田真澄、小沢昭一、天津敏、そして池部良。男の色気が凄いのです。
今まで散々、健さんに殺された方々も、たくさん出ております。オープニングなど、「昭和残侠伝」で、一緒に殴り込みにいった、池部良を、健さんが殺すのですから、もうたまりません。
暴力シーンはありますが、決して過剰ではありません。当時の東映としては稀なほど、スタイリッシュな作風です。監督の降旗康男は、このあと、同じ高倉健、倉本聰で、あの名作「駅」を作ります。ただし東宝で。
小林稔侍は、この映画で、台詞もない、元ヤクザで板前の、花井を演じておりますが、ここから小林稔侍は大化けします。
また、早くに亡くなった三浦洋一など、明治の空手部崩れで、グレていたなどと、健さんをイメージさせます。
今まで何度も放送されましたが、民放大概カットされて、ズタズタでした。今回は恐らくノーカットでした。ラストまで、ほとんど覚えておりましたが、何度見ても、いいものはいい。
この、加納秀次、通称人斬り秀を演じられるのは、当時も今も、高倉健だけです。
※この映画が、封切られたとき、私は、高校三年生でした。映画館は、当然東映です。シネコンなどありません。
ある日、クラスの女の子が、その子の友達を、この映画に連れていってくれと頼まれました。
私は、なぜか、断ってしまいました。せっかく女の子とふたりで、映画に行けたのに。
今、思うと、大変惜しいことをしました。