加藤剛さんが亡くなりました。

「大岡越前」や、「砂の器」ばかりが、追悼記事に書かれておりますが、恐らくはいつもの通りで、書いている記者は、加藤さんの作品など見ていないでしょう。

「獅子の時代」と、「風と雲と虹と」という、二本の大河ドラマに、誰も触れていないことでわかります。

特に、「獅子の時代」では、当時の東映のトップスターだった、菅原文太さんとの初共演で、しかも脚本が山田太一さんという、私には夢のような組み合わせでした。

菅原文太さん扮する、名もない会津の下級武士、平沼と、こちらも全く知られていない薩摩の武士、苅野 が、明治維新という、時代の波に翻弄されるさまを、大原麗子、鶴田浩二、尾上菊五郎、中村富十郎、大竹しのぶ、児玉清、根津甚八、丹波哲郎ら、超のつく豪華キャストで紡がれた傑作です。しかも音楽は、ダウン・タウン・ファイティングブギウギ・バンド!!

決して偉人ではなく、それでも必死に闘った人達を、山田太一さんらしい、端正でありながら、大胆な発想のストーリーで、その脚本に、菅原さん、加藤さんが、見事に応えて演じておりました。

特に、ラストは、大河ドラマのなかでも、語り草になるほどのもので、これはDVDになっているので、ぜひ見て頂きたい。

加藤剛さん扮する苅野は、大久保利通を師と仰ぎ、明治維新の勝ち組である、薩摩におりながら、決して奢らず、最後まで真っ直ぐに生きます。それはまるで、加藤剛さんそのものであるように。

私が最後に見たのは、松田龍平さんの、「舟を編む」でした。かなり年老いておりましたが、そこにいたのは、やはり加藤剛さんのままでした。

「砂の器」も、何度も何度も見ましたが、和賀英良役は、加藤剛さんを超えた役者は、ただのひとりもおりません。

器用とは思えませんでしたが、紛れもない名優です。

合掌。