名作と名高い、映画の「幸福の黄色いハンカチ」を、私は封切り当時リアルタイムで見ております。

当時、生意気盛りの高校生だった私には、同じ年に洋画で一位に選ばれた「ロッキー」共々、そこまで持ち上げなければならない映画かと思いました。

まさにその年、あの悪名高い日本アカデミー賞が始まり、第一回のアカデミー賞が、この映画でありました。しかし、選考委員長の作家が、「幸福」をこうふく(映画のタイトルでは、しあわせです)と読んだ時点で、こりゃ駄目だと思い、その駄目さかげんは今に至るまで続いております。

昨日、阿部寛さん主演で、テレビドラマとしてリメイクが放送されました。

堀北真希さん、浜田岳さんというトリオも悪くないし、武田鉄矢さんや倍賞千恵子さんを特別出演させるといいうオマージュもちゃんと入っております。

にも関わらず、何なのでしょう。この薄っぺらさは。

炭鉱を漁師に変えるのも、夕張を焼尻島に変えるのも別に構いません。しかし、何というのか、とにかく薄いのです。

例えば、あえて避けたのでしょうが、刑務所を出た映画の高倉健さんは、駅前の食堂で、ビール、カツ丼、ラーメンを注文し、まずビールを一気に飲み干し、何とも言えない表情をします。そのカットだけで私たちはスクリーンに引き込まれました。

それが、阿部寛さんは、スナックでカレーを食べているのです。そこには何の思いもありません。

堀北真希さんもそうです。彼女は都会にでそびれ、親のスナックを手伝っておりますが、同じ役を演じた桃井かおりさんは、当時の国鉄の売り子で、周りから浮いた存在でした。ここは私の記憶違いかもしれませんが、彼氏を同僚に盗られたか何かで北海道にきたような設定だったと思います。人物設定が遥かに綿密なのです。

これはやはり脚本ですね。余計な登場人物が多いぶんだけ、中身が薄まっています。

だから、当時そんなに思い入れのなかった、映画の「幸福の黄色いハンカチ」が、えらく素晴らしい作品に感じました。

ただ、一番ちがうところがひとつ。

阿部寛さんは焼尻に戻り、浜田岳さんも羽幌で仕事を探すというところで、ハッピーエンドのようにドラマは終わります。

無理ですね。

殺人を犯した40男が、あの狭い島で再就職はまずありません。また、羽幌で若い浜田君が働く場所もほとんどありません。

彼らの今後は、決してハッピーではないのです。それだけ時代が悪くなったという事だけは再認識しました。映画の公開から30年とちょっとです。