アメリカより
アメリカから青森にテレビ電話して
分離症の痛みを見てほしいと連絡があった。
聞けば中学生のバレーボール部の女の子で
バレーボールのアタッカーで活躍していたのだが
腰が痛くてMRIを撮ったところ分離症だと診断され
さらに病院では6ヶ月安静にしなさいと言われ、
そんなに休んだら高校のスポーツ推薦に漏れると困って
人づてに巡り巡って俺に辿り着いたようだった。
分離症の多くは下部腰椎で起こり、
普通生活しているだけで5％の人が
それが起こると言われており
成長期の運動選手の場合20％で分離症になる。
つまり5人に1人は分離症になり、
そこから分離すべり症へ
発展するケースもしばしばある。
成長期に多い理由としてはね、
骨が縦軸に成長するのに対して
筋肉の長さが付いていかない
期間などの状態あるとする。
その状態で更に運動して柔軟な動きが
できない状態なのにジャンプし
脊柱の屈曲伸展や回旋を行い
無理が腰にかかり骨折すると言われている。
背骨を見ればわかるが、腰椎は捻れないことに
なっているんだけど、捻れないのに捻るのを
続けていると疲労が溜まっていき最終的に折れる。
折れるからには痛い。
実は俺も高校の柔道部で腰椎分離症になっちゃって、
大学時にそれが発展し腰椎すべり症と診断され
大学病院では
「あぁ滑ってんね。これ一生痛みは取れないから
痛みと上手く付き合って生きてください。
え？スポーツ？無理無理、
続けると車椅子生活になるかもしれないよ」
と冷たく言われ改善方法も何も説明されないまま
脚を引きづりながら帰ったのを今でもよく覚えている。
その後俺はどうなったか？
全日本サンボ選手権に出場できるほど回復し、
無事に全ての体育学部の単位を取得し卒業している。
しかもその後滅多に腰痛を感じることすらない。
当時の医師は痛みが取れると
知らなかったのかもしれない。
しかしこの女子バレーの中学生の先生も
似たり寄ったりの世界だっただろう。
俺にこのテレビ電話で治せと言ってきた
つまり女子バレー選手を紹介してきた方は
元々バレーボール部出身だったようで、
「アタッカーっていうのはね、右利きの場合は
こうなり背骨を回旋しながら着地するでしょ。
だから左右で折れているのが違うんだね
と解説をしてくれた。
とにかく俺はデニーズで女子バレー部員に
テレビ電話をはじめたんだ。
テレビの先にはお婆ちゃんと孫が出てきた。
婆さんが携帯持って、
孫がお辞儀する時や仰向けになって検査する時、
カメラを動かしすぎてんのか手が元々震えてんのか、
こっちはアメリカで目が回っちゃうし耳が遠くて
「はぁぁ？？あんだって？」
と青森弁の志村けんのコント状態で始まってしまった。
婆さん、、、あんたじゃ無理かもしれない。
そう思ったんだけど、カメラを固定してくれた
わずかな時間でKYTの膝立テストで分析し
カラダの変位を理解し動きを指導した。
まもなく彼女の動きは改善をみせた。
仰向けで動きが悪かったブリッジは
カールゴッチのジャーマン級に
反り上がり綺麗なアーチを見せた。
また立位で後屈は、やはりレインボーの様に
綺麗な弧を描き、これまたブリッジする勢いで
後屈できる様になったが痛みは無くなった。
（ちなみに分離症での後屈は禁忌と言われている）
前屈の時、痛みはないが若干お尻に痺れが来ると言った。
可動域が増え、筋肉の短縮している部分が
可動域についてこれないでいて
神経を圧迫している可能性があり
これはさほど問題ないと思われ、
固まった臀部を解させるとまもなく痺れは消えた。
また寝方の指導もした。
どの動きも痛みがなくなった頃20分が経過していた。
このまま痛みが抜けた状態を維持できるといいなぁ。
俺の分離すべり症の体験を話しして
「俺が痛めた時はこの世の終わりかと思ったけど、
今何ともないからね元気元気！
あれから腰痛なんてなったこと無いからね」
と励ますために優しい嘘を付いた。
だって時々俺だって歳頃なボディだからさ、
疲れすぎるとカラダが固まって
腰が痛くなることくらいあるよ。
自分で治すけどさ。
俺は彼女と婆さんに手を振り、愛想も振りまくと
テレビ電話をオフにしデニーズを後にした。
初春のアメリカの夜風は
爽やかに俺の頬を通り過ぎていった。
爽やかマックス。
解剖学を理解していくと触らないでも
治せるようになってしまうのですね。
遠隔療法難しいけど楽しかったぞぃ。
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