歌うクジラ | 草の縁

草の縁

草の糸をつくったり。草の糸で織ったり。草木で染めたり。
そんな“ものづくり”と“しぜん”をキーワードに
つらつらと書いていきますので、末長くよろしくお願いします。

満員電車の通勤のお供にと
古本屋で何気なく手にした一冊。
意外に面白かったので、ちょっとご紹介。

$QUE ONDA VOS!!!

『歌うクジラ』 (創元推理文庫)
ロバート・シーゲル 著
中村融 訳

哀調を帯びた鳴き声で“歌うクジラ”と呼ばれる
ザトウクジラの若者、
のちに群れの長となるフルナを語り手に、
その成長と冒険、試練の日々描いた物語です。

神秘的なクジラの神話や伝説が
織り込まれているだけでなく、
海の生き物の姿と、
捕鯨や海洋汚染などについての問題も
クジラの視点でリアルに描かれていて、
生き物と人間、そして自然の共生のあり方を
考え直させてくれます。
といっても、
ヘンに学問的だったり、
自然保護運動に偏っていたり、
クジラを神聖化していたりということがなく
純粋に物語として楽しめるの。

作者は、アメリカの大学で教鞭をとる英文学教授で
詩人でもあるというだけに、言葉の一つひとつが美しく
(もちろん、訳者の翻訳のたまものなのだけど)
旋律を奏でるように物語が展開されていて
つい引き込まれてしまいました。

この本は、児童文学界からクジラ学会にいたる
幅広い層から賞賛を浴びて、
『白いクジラ』『氷海のクジラ』という続編も発刊!
三部作として完成されたのだとか。
続きを読むのが楽しみ、楽しみ♪