実は異動が決まったすぐに水卜アナが私にブチギレるという事件があった。まあそれは無事乗り切ったので機会があれば今度書くことにする。
都会にきて私自身の彼女への執着はほとんどなくなってしまった。
不思議なのだがもともと私自身も都会の出身で今までの生活が戻っただけなのだが、田舎にいて都会暮らしを忘れてしまっていたようだ。
ここに来て満員電車での通勤、遅くまで開いている飲食店や店。インバウンドの外国人観光客も多く、たくさんの人を目にする。
それが原因というわけではないのだが、きれいな人、スタイルのいい人、大胆な格好をした女性とすれ違う。すると不思議となぜあんなにも水卜アナに固執していたのだろうと思うようになった。
フワちゃんとは相変わらず連絡を取り合っている。こないだ、初めてこっちに遊びにきた。
ただでさえフワちゃんとのやり取りがある上にさらにまあまあの頻度で連絡を取り合う人が増えた。森高さんである。
森高さんとはほぼ毎日、会社のメールでやり取りをしている。休みの日や、夜はLINEもする。内容は他愛のないことが多いのだが、私がいなくなった母店の様子を事細かく教えてくれる。
「今日、水卜さん母店に来てましたよ〜」「今、アキラ店長とかとお昼行きました!」とか。
森高さんはフワちゃんの同期なので森高さんには「絶対に俺とLINEのやり取りしてること、誰にも言ったらだめだよ。フワちゃんにも言わないでね。」と念押しすると頑なにそれを守ってくれている。なのでフワちゃんは私が森高さんと会社のメールやLINEでやり取りしていることを知らない。
となると、必然的に水卜アナはどうでもよくなる。元々、下僕のような扱いを受けていたのだからちゃんと接してくれる森高さんとのやり取りが増えるのも当然だ。
5月のGW、平日に前乗りで1日休みを取って地元に帰り、その夜、水卜アナとサシ飲みに行った。でもなんてことはなく、警戒しているのか、そんなにお酒も飲まないし、もちろんなにもなく終わった。
6月、母店に役員がくることになり、懇親会があった。ところがこの役員のことは以前から嫌いといっていた水卜アナ。懇親会の前日、私にも「最近やる気がない、鬱かも」とか「しらん人と飲むなら1人で飲みに行きたい。」「役員のこときらいやからしゃべらんやろうな〜」といったメールが来ていた。
ただ、それはいつものことでどうせ、飲み会になったらガンガン飲んで盛り上がるんだろうと思っていた。
飲み会の次の日、森高さんに状況を聞いてみた。
席はくじ引きだったらしく、役員の左横に森高さん、右横に私の後任の人、役員の正面にアキラ店長、左横に我々とは違うエリアの在宅のおばちゃん、右横にぶりっこという最悪な布陣だったらしい。森高さんは何度かそういう席でご一緒したが、ほんとに一言もしゃべらない。
おそらくアキラ店長も場がもたせられなかったのだろう。途中で水卜アナと交代したらしい。
するとその役員が、「水卜さん、東京きたらいいやん、おいでよ!」とずっと言っていたらしく、森高さん曰くそれで機嫌を良くしたのか、調子にのりまくり、2次会でも相当飲んだらしく、「quatroさんがいないから代わりに他部署のおじさんがホテルまで送ったらしいですよ。」とのこと。
まあそれはいいんだが、次にきたメールを見てなんか一気に冷めてしまった。
「そうとう飲んでたらしく、『ワタシ気づいたらパンツ履いてなかったんですよ〜 他部署さん知りません?』って。そしたら他部署さん困って『水卜さん変なこというのやめてくれない?』って言ってましたよ。」
まあ、別に私だけに言っているとは思ってなかったが冷静に、離れたところから文章で書き起こされたものを読むとかなり下品だなと思った。元々私も関西人なのでノリは悪くないほうだ。その場にいれば突っ込むだろうが、森高さんの文章を読んだとき、なんて下品なことを言うんだろうと思ったし、どうしてこんなことを恥ずかしげもなく言うんだろうという思いがこみ上げてきたあと、あれ、俺、なんか冷静に彼女のこと見れてる?と自問自答した。
妻やフワちゃんが彼女に対してずっと言っていたことが今になってわかったのかもしれない。