昨日の東大であった一般講演会の感想です。
全体の流れとしては
①小柴昌俊さんの「あいさつ」
②小林富雄さんの「LHC実験が切り拓くテラスケールの世界」
③村山斉さんの「LHC実験から宇宙へ」
でした。
①
小柴さんのあいさつは短いものでしたが、いつもながら印象に残る力強い言葉でしたね。
私たちは国民の税金で夢を追わせてもらっている。
というのは以前にも聞いたことがありましたが
今回のLHCの実験は世界の税金で夢を追わせてもらっている。
だから甘いことをしてはならない。
しかしながら、日本人がμ粒子を捉える技術に貢献しているのは誇りに思う。
とのことでした。
そして、これで完成ではなくてすべては
これからなんだと言ってました。
なかなか厳しい言葉のようにも聞こえましたが小柴さんがこの実験に期待しているのも感じ取れました。
あと、質問タイムで加速器も実用できるんでは?という質問がありました。
単なる物理学者の夢ではないということです。
なんでも加速器でニュートリノを発生させてウランに衝突させ核分裂を起こすとかなんとか・・・
よくわかりませんでしたが、どうやら現在の理論レベルや技術レベルでは難しいみたいです。
それとなぜ陽子ー陽子反応なのか?という質問がありました。
陽子は三つの素粒子(クォーク)から出来ているので複雑な反応になる。ならば電子などの簡単な粒子でやればよいのではないかということです。
これはどうやら円形加速器だかららしいです。
電子などは質量が軽く、回転の加速の際の自身の放射に影響をうけて高いエネルギー衝突は出来ないからです。
だから、電子ー陽電子反応を実現する線形加速器の建設も計画されているらしいです。
この線形加速器の話は初めて聞きました。
LHC実験すらもまだ最初の段階なんだなという印象を受けました。
②
小林さんの話はLHCの概要の説明でした。
世界一のエネルギー、
テラスケールという言葉を強調していました。
これはTeV(テラ電子ボルト)のことで標準模型が~200GeVであることを考えると、未知の領域のエネルギーだということです。
そして、標準模型の説明とともにこれが究極の理論でないことも言ってました。
標準模型における未解決問題には次のものがあるとのことでした。
・粒子が質量を持つ理由
・粒子の分類は人間の恣意
・ニュートリノの質量がほかの粒子とかけ離れている理由
・大統一理論は正誤
・重力の他の力の統一
一番上の粒子の質量獲得の仕組みはヒッグス粒子との作用というのが現代物理のもっとも信憑性の高い理論でこれはもし理論が正しいなら
絶対に見つかると言ってました。
なんでも、ヒッグス粒子の質量は理論的に大体どの程度なのかわかっていてLHC実験ではそのエネルギーでの実験は可能なので見つかるようです。
それにしても絶対ってすごいですね。
もっと観測の可能性は低いのかと思ってました。
その後はLHCの実験で日本人の多くが貢献したアトラス計画の話でした。
これは最初に小柴さんが話していたμ粒子の観測とも関係があって、とりあえず発生した粒子はもらさず観測しよう。それが新粒子の発見にもつながるとのことでした。
それと、このアトラスの実験装置映画『天使と悪魔』にも登場したと言ってました。
小説は読みましたが映画は観たことなかったので今度観てみます。
最後の質問タイムに
テラスケール、TeVがいまいち実感できないので何かよい例は無いかという質問がありました。
これに、小林さんは乾電池一兆個つなげれば大体LHC実験と同じことが出来ると答えてました。
おお!!
わかりやすい!
やはり一流の物理学者はこういう例えがうまいですよね。
見習いたいです。
③
村山さん、話上手すぎ!!
ユーモラスでカリスマ性が光ってましたね(笑)
加速器はタイムマシーンであり、顕微鏡であり、望遠鏡である。
という言葉には心打たれました。
村山さんは理論的な話で、
余剰次元
超対称性
宇宙の相転移
ヒッグス機構
のそれぞれの話をしてくださり、これらがもし正しい理論ならテラスケール実験で証拠が見つかるというものでした。
なので今回のLHC実験は非常に重要な実験だということです。
それぞれの話はなんとなく聞いたことありましたが、全てがテラスケールにつながるというのは面白いですよね。
それにしても、あの銀河団の衝突によって生じるダークマターの波紋は個人的には強く印象に残りました。
宇宙論の勉強はまだ全然やってませんが、俄然興味がわいてきました。
全体を通してLHC実験の重要性を今回はっきり認識できました。
雨降りで寒かったですが講演に参加して良かったです。
本当にこれからが楽しみですね。