若い世代が公募展から離れている理由って? | フォノン通信

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(AIが作成した画像)

 

若い世代が公募展から離れている理由って?

 

今日はちょっと、絵を描く人たちの「今」について思うことを書いてみます。

 

僕は、20代の頃から絵を描いていて、これまで何度か県展などの公募展に出品してきました。長年やってきた中で、公募展の雰囲気や出品者の顔ぶれもずいぶん変わってきたなぁと感じています。

 

最近、特に気になるのは「若い人の出品が少ない」ということ。20代〜40代の出品者がかなり減っている印象です。おそらく出品者の平均年齢は60歳以上ではないかと思います。

 

わが県の県展についてですが、まず世代別の出品数のデータが公表されることはなく、最近は総出品点数すら発表しなくなりました。

 

なぜ若い世代は公募展から離れてしまっているのか?

 

もちろん、いくつかの理由があると思います。一番大きいのは「時間がない」ということ。

 

20代、30代、40代って、仕事や子育てで忙しい時期ですよね。絵を描くって、時間もエネルギーも必要です。キャンバスの前に座って、集中して描ける時間なんて、なかなか取れないのが現実。

 

それにアートへの強い気持ちがないと絵は続けられませんからね。

 

でも、理由はそれだけじゃないと思います。

表現の方法がすごく多様になった

というのも大きな理由だと思いますね。

 

たとえば今なら、動画をつくったり、イラストやマンガを描いてSNSに投稿したり、自分でYouTubeチャンネルを持って発信したり。

しかも、SNSにアップすればすぐに見てもらえるし、「いいね」もコメントも返ってくる。

 

それに生成AIの登場で、表現行為の選択肢がさらに増えました。

 

そう考えると、公募展ってちょっとハードルが高く見えるかもしれません。

 

出品して、審査を待って、展示されて……というプロセスは、今の若い人たちにとっては「時間がかかる」「評価まで遠い」「ちょっと閉じてる」という印象を持つかもしれませんね。

 

それに、公募展でよく見かける作品スタイル(写実画、抽象画、重厚な立体など)は、どこか「古典的」あるいは「近代的」で、若者の感覚からすると「ちょっと古くさい」と感じられることもあるかもしれません。

 

まして、洋画と日本画のジャンル分けなどナンセンスと思う若い人もいるでしょう。

 

ジェンダー問題やSNS文化、デジタル技術、AIなど、今をテーマにした作品を作る若者にとっては、公募展という場そのものが自分の作品の“居場所”には思えないのかもしれません。

 

さらに、出品料や搬入費用もそれなりにかかります。お金や時間をかけて出す価値を、若い世代が見出せるかどうか……これはなかなか難しいところです。

 

ちなみに僕の住む県でいうと、県展の出品料は6000円です。全国的な大きな美術団体が主催する公募展の出品料は、15000円くらいでしょうか。それに遠方まで輸送する場合は、輸送費が数万円かかります。

 

こういう時代だからこそ、公募展のほうが少しずつでも変わっていくことが大事なんじゃないかと思っています。

 

たとえばデジタル作品を受け入れたり、SNSと連動した発表の場を設けたり。

 

現代的なテーマに開かれた公募展が増えていけば、若い世代も「ちょっと出してみようかな」と思えるかもしれませんが、どうでしょうか。

 

公募展も次の時代に向けてアップデートしていけたらいいなと思うのですが。

そうは言ってみたけど、現状ではアップデートは難しいかもしれませんね。

 

僕は、現在、ある県にある美術家連盟に所属していて、美術家連盟主催の公募展が開催される時期には搬入や展示などの手伝いをしています。その経験から若い世代でこういった公募展に関心を持っている方は少数だなと実感しています。

 

*今後も美術の公募展は、衰退しながらも高齢者のイベントとなって存続していくだろうと思います。悲しいかな、それが現実です。