ジェレミー・リフキン著『レジリエンスの時代』紹介(6) | フォノン通信

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☆ジェレミー・リフキン著『レジリエンスの時代』の「序」のポイントを抜粋しています。

 

☆『レジリエンスの時代』では、世界が現在の状況に至った経緯を説明するために、歴史を遡り考察をすることが多い。

 

【抜粋開始】

 

 ここからは、人類の最初の祖先が直立歩行を始め、アフリカの大地溝帯から開けたサバンナへと冒険の旅に出て、そこから諸大陸に拡がって以来の道のりをたどることにしよう。

 

 人類は、この世界の卓越した徒歩旅行者であり、日々の生活の糧以上のものを探し求めてきた。私たちの中には、何かもっと深く、満足しきれないものが渦巻いており、その感覚は他のどんな生き物にも見られない。そう認めようと認めまいと、私たちは自らの存在意義の絶え間ない探究の途にある。その探究心こそが私たちを突き動かしているのだ。

 

【抜粋終了】

 

☆人類がアフリカの大地溝帯からサバンナへ移動を始めたのは、約二百万年前から約百万年前の間とされている。この移動は、人類の進化において重要な転換期となった。

私たちは自らの存在意義を絶え間なく探究してきた。その探究心が私たち人類を突き動かしてきたとジェレミー・リフキンは言っている。

 

ここで、次の抜粋部分を理解しやすくするために用語の解説をしておきます。

解説したい用語は、「地球の全バイオマス」と「光合成の純一次生産量」です。

 

地球の全バイオマス(total biomass)とは、地球上に存在するすべての生物の総質量を指します。これには、植物、動物、菌類、微生物など、あらゆる生物が含まれます。バイオマスは、一般的には乾燥重量で測定されることが多いです。

 

 

光合成の純一次生産量(NPP)とは、植物が光合成によって生産した有機物量から、植物自身の呼吸によって消費された有機物量を差し引いた値です。植物が光合成により大気中の二酸化炭素を固定して生産する有機物の量、またはその速度とも考えられます。



 純一次生産量は、生態系に流入する炭素量に相当し、その生態系の現存量や生物多様性に大きな影響を与えます。また、食糧確保や地球温暖化の予測の上からも重要です。

 

【抜粋再開】

 

 だが、この旅のどこかで、私たちは道を失った。人類は、地球に存在してきた期間のほとんどで、他のすべての種と同様、周りで展開する、より大きな自然の力に絶えず適応する方法を見つけてきた。

 

 やがて今から一万年前、氷河期が終わって、「完新世」と呼ばれる温暖な気候が訪れると、私たちはじつに独創的な新しい方向に進路を転じ、自然に対して人間に適応することを強いた。

 

 5000年前に灌漑農業帝国が台頭し、その後、中世後期と近代にプロト産業革命と産業革命が起こり、これが文明と呼ばれるようになる。こうして私たちの旅は、自然界の支配の拡大が特徴となった。

 

 そして今、私たちの成功― 仮にそれを成功と呼べるなら、だがーは、驚くべき統計で示すことができる。ホモ・サピエンスは地球の全バイオマス(生物量)の1%に満たないにもかかわらず、2005年には光合成の純一次生産量の24%を使っており、現在のペースでいけば、2055年には44%を使い、地球上の他の生き物に56%しか残さない可能性が見込まれる。これでは明らかに持続不可能だ。人類全体が、生命の標準から大きく外れ、今や同胞の生き物たちを道連れにして、新たに始まった「人新世」の巨大な地質学的墓場へと向かっている。

 

【抜粋終了】

 

以下は、『レジリエンスの時代』 第7章 

209ページからの引用です。

 

*2018年、ワイツマン研究所とカリフォルニア工科大学の研究者たちが、「地球上のバイオマス分布」と題する論文を「米国科学アカデミー紀要」誌に発表した。彼らの報告によると、あらゆる分布群のバイオマスを合計すれば、炭素はおよそ550ギガトン(訳注:1ギガトンは10億トン)で、そのうち450ギガトンを植物が占めるが、第二位はなんと細菌で、70ギガトンになるという。第3位以下は順に、真菌が12ギガトン、古細菌が8ギガトン、原生生物が4ギガトン、動物が2ギガトン、ウィルスが0.2ギガトンだ。この広範な種の分類の中では、人間は地球上のバイオマスのうち0.06ギガトン足らずしかない。

(以上、本書からの引用)

 

 

【引用再開】 

 

 皮肉にも、私たちの種は同胞の生き物たちとは違い、二つの顔を持っている。仮に私たちが地球を台無しにする種だとしても、地球を癒す可能性も秘めている。幸いにも神経回路に共感的衝動という特別な資質が組み込まれているからだ。この資質は可塑性を備えており、無限に拡大できることが証明されている。この稀で貴重な特質は、進化の過程で登場したものの、何度となく後退しては再浮上し、そのたびに、新たな高みに到達し、また後戻りしてきた。近年、若い世代はこの共感的な衝動を、私たちの種の枠を超えて、同胞の生き物たちにまで示し始めた。それらの生き物もみな、私たちの進化上の家族の一員だからだ。この共感は生物学者が「生命愛(バイオフィリアの意識)」と呼ぶもので、新たな前途の有望な兆しだ。

 

【抜粋終了】

 

本書の第13章に書かれている「共感的衝動」について解説している部分を引用します。

 

【引用開始】

 

 認知科学者や心理学者や社会学者らは、人間の神経回路に織り込まれた共感的衝動の働きの理解にとりわけ注意を払いながら、人類の生物学的特性を詳しく調べてきた。そして、私たちの存在の根底には「他者」に共感しようとする、生まれながらの生物学的欲求があり、それが人類を特別なものにしていることを発見した。

 

【引用終了】

 

*今回で、『レジリエンスの時代』の巻頭の「序」からの抜粋を終わりにします。

 

ジェレミー・リフキンが、著書『レジリエンスの時代』の中で何を言おうしているのか、大方の予想がついたのではないでしょうか。

 

*余裕があれば各章から、僕が特に注目したジェレミー・リフキンが行っている分析や解説を紹介したいと思います。

 

*ここまでお読みいただきありがとうございました。