★今日は、宇宙論の本を紹介したいと思います。
★本のタイトルは
『なぜ宇宙は存在するのか』
副題は「はじめての現代宇宙論」
著者は、野村泰紀 カリフォルニア大学バークレー校教授、バークレー理論物理学センター長
★講談社のブルーバックスの一冊です。
★YouTubeに pivot というチャンネルがある。そのpivotの番組で野村泰紀教授が出演し、マルチバース(多宇宙)について熱く語っているのを見た。楽しく物理を語る面白い学者だなという印象をもった。
★野村教授の『なぜ宇宙は存在するのか』はブルーバックスの中ではベストセラーらしく
2022年4月20日に第1刷が発行されて、2024年1月9日に第15刷が発行されている。
★さて、僕がこの本を買った主な理由は、マルチバースについて丁寧に分かりやすく書かれているのではないかという期待があったからです。
★購入して4日ほどで読了できた。
著者の解説が分かりやすかったので速く読み進むことができた。
★本書は第1章から第6章まである。
各章はどんな内容なのか僕が注目したところを中心にまとめたいと思います。
第1章 現在の宇宙
第1章ではダークマターとダークエネルギーに触れています。
ふたつともまだ正体が分かっていません。
ダークマターは、私たちが知っている物質に重力を及ぼす以外、既知の物質と相互作用をしません。文字通り「見えません」。
ダークマターの候補はいくつか挙がっているけれど、これといった決め手に欠けるのでまだ特定に至っていない。
本書の第3章でダークマターの有力だろうと考えられている候補を2つ紹介しています。
現在、宇宙は加速膨張している。
つまり宇宙の膨張のスピードが速まっているのです。
この加速膨張を引き起こしているのが「ダークエネルギー」であるが、これもその正体が何か特定できていない。
野村泰紀教授は、ダークエネルギーの正体の最も有力な候補は、「真空のエネルギー」と呼ばれるものだと述べている。
この本の重要なキーワードは「真空のエネルギー」です。「真空のエネルギー」という用語は頻繁に使われます。
空間から既知の物質とダークマターを取り除くと「真空」になると考えられる。
この「真空の状態」も物質がないのにエネルギーを持っている。それが「真空のエネルギー」である。
この真空のエネルギーの値が正であれば、それが宇宙を膨らませるように働き、負の値であれば宇宙を縮ませるように働く。
観測のデータからどうやら真空のエネルギーの値は「正」であるらしい。ということは、もし膨張宇宙が正の真空のエネルギーを持ち、かつその影響が物質による引力の効果より大きければ、宇宙の膨張は加速していくことになる。
★謎だらけの宇宙の組成
現在の宇宙は、エネルギー密度で見た場合、約69%が加速膨張を引き起こすダークエネルギーで占められていて、物質は残りの
約31%にすぎない。
その物質も、約6分の5(エネルギー密度全体の約26%)はダークマターと呼ばれる正体不明の物質であり、私たちの知っている「標準模型」の粒子は全エネルギー密度の
約5%を占めるにすぎない。
(註:多くの科学教養書では「エネルギー密度」とは言わずに単に「エネルギー」と表記しています。)
「標準模型」の粒子の例を挙げると電子、クォーク、光子、ニュートリノなどがあります。
なお、標準模型とは何か。
標準模型とは、素粒子物理学において、強い相互作用、弱い相互作用、電磁相互作用の3つの基本的な相互作用を記述するためのモデルのひとつである。
★原子を構成する電子や陽子、中性子など私たちが知っている物質が占めるエネルギー密度が、宇宙の全エネルギー密度のわずか約5%というのはすごいと思いませんか。
★現代物理学は進歩したといっても我々が特定できている物質は、エネルギー密度に換算して全宇宙のエネルギー密度のわずか5%で、残り95%についてはまだ謎というわけです。
◇以上第1章のポイントをまとめました。
次回は第2章から僕が重要だと思った事項につてまとめたいと思います。