坂本龍一・語録(6) | フォノン通信

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◇坂本龍一・語録(6)


★引用元は坂本龍一・語録(5)と同じ著書『反定義』です。

◇2001年の9.11の翌年発行の著書であることを念頭に置いて読んでください。
この著書が出版されたとき坂本龍一さんは

50歳でした。

(引用開始)

 

最初はマンハッタンから車で45分ぐらい北に行った田舎町に住んだんですが、ぼくが教わった、ぼくの知っていたはずのアメリカ、つまりベトナム戦争を通過したアメリカはどこにも見えない。

 

多分、“ベトナム”以前の60年代前半のアメリカがそのまま残っているという気がしました。

 

確かにコンピュータが家庭に入り、車やテレビは日本製になったかもしれない。

 

しかしまるで“ベトナム”などなかったかのように暮らしている人たちがい、町のたたずまいがある。それがすごいショックだったんですね。
 

ぼくは一生懸命”ベトナム“の痕跡みたいなものを探すんだけども、ぜんぜんない。

 

そして一般のアメリカ人は、あまりにも世界のことを知らない。
(中略)
いろいろな生活の局面で出会うことに違和感を感じていましたが、それが一つの大きな全体像にはなっていなかったんですね。

 

それが9.11以降、パズルの断片がピタッと合わさり、一つのアメリカ観と言いますか、あるいはアメリカが一極支配する世界の構造が明確になってきたという感じがします。

しかしここで慎重にならなくてはいけないのは、アメリカという国がやっている政策とアメリカ人は、いちおう区別しなきゃいけない。
(引用終了)

★アメリカ同時多発テロの9.11から22年が経過し、当時とはアメリカの様子はだいぶ変わってきたと思います。トランプが大統領になってから以降のアメリカは、トランプ支持派と反支持派に分かれて、内戦が起こっても不思議ではないような事態になっています。時代は変わったのですね。

★坂本龍一さんは、9.11のときにニューヨークにいて同時多発テロをじかに見ているのです。その体験について述べている箇所を引用したいと思います。


(引用開始)
坂本:9月11日の朝、ぼくはテレビを見てなかったんですが、一機目の飛行機が飛び込んだ音を聞いてテレビをつけたら、すぐ二機目が突っ込んできたんで、カメラを持って飛び出して七番街で写真を撮った。

 

そしてWTCが炎上しているのを見ながら、何だろう、これは何だろうと自問していて、まず最初に僕の頭に去来したことは、アンチ・グローバリゼーションの過激派がやったのかなということでした。

 

そして次に、ブッシュの自作自演ではないかと思った。

で、あながちどちらもはずれていないというか、あれはいってみればアンチ・キャピタリズムであり、ブッシュはテロを最大限に利用して外交政策、国内政策の締めつけに入っていった。

 

あのテロでいちばん得したのはブッシュだともいえるわけです。

 

だからいまでもその疑いは若干消えてないけど、黒幕とされるビンラディンとブッシュはグルじゃないかと思いました。

アンチ・グローバリゼーションの若者たちは今後も過激化する恐れもあるし、彼らの一部が世界のテロリスト集団と結びついて何かやることも、当然考えられる。

 

世界にここまで緊張が高まってしまったんだから、政治家のやることは空爆してより緊張を高めることではなく、緊張を下げることだと思う。
(中略)
時間はかかるけども、戦争よりもはるかに安いコストで、テロリズムが起こる真の原因の問題解決にあたること。

 

これは富の偏在の問題だからむずかしい。

 

資本主義の根幹のところまでいかなきゃいけないから大変だけども、ほんとうはそうしなきゃいけないはずだと思います。
(引用終了)

★坂本龍一さんの発言のほんの一部ですが、引用しました。坂本龍一さんの政治的なスタンスが窺えるところをピックアップしてみました。


◇次回の坂本龍一・語録(7)では、

2012年に出版された著書から坂本龍一さんが60歳の時の発言をピックアップしたいと思います。

◇ここまでお読みいただき、ありがとうございました。