フィリップ・ボール著『人工培養された「脳」は誰なのか』を読んで(1) | フォノン通信

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『人工培養された脳は「誰」なのか』(原書房)(2020年3月刊)
この本の著者フィリップ・ボールは、イギリスの人気サイエンスライター。

 

フィリップ・ボールの著書の中では、「自然が創り出す美しいパターン」三部作『形』、『流れ』、『枝分かれ』が有名である。

この三部作には惹かれものが多く、購入して読んだ。


☆2017年の夏に著者フィップ・ボールの腕から採取された小さな断片(組織)が、ミニチュアの原始的な脳につくり替えられた。

いわゆる「脳オルガノイド」がつくられた。この奇妙な経験を理解しようと試みた結果この本が生まれたと著者は述べている。

 

☆最近のバイオテクノロジーの進歩には凄まじいものがある。

例えば、ブタのなかで培養されたヒトの器官、3Dプリンターによる臓器印刷、人工胚、人工精子・・・・これらのバイオテクノロジーがつくり出す臓器などをヒトが利用することが普通になる未来が来るかもしれない。

 

オルガノイド(Organoid)とは試験管の中で幹細胞から作るミニチュアの臓器ことである。 幹細胞のもつ自己複製能と分化能を利用して自己組織化させることで3次元的な組織様構造として形成される。

 

☆今回、著者の腕の組織から「脳オルガノイド」をつくる実験が行われた。実験を行ったのは、ユニヴァーシティー・カレッジ・ロンドンの神経科学者である。

 

☆試験管のなかで培養液に浸かった著者の体の一部を種として、8か月後には小さな脳に似たものができた。それは、レンズマメくらいのニューロンの塊だった。これが、「脳オルガノイド」である。ニューロンの塊は、接続し合って密なネットワークをつくり、本物ニューロンと同じく互いに信号を送る合うことができた。

☆この本を読み、「オルガノイド」という言葉を知り、「オルガノイド」の研究について知ることができた。

☆この本で触れている内容。


細胞、DNAと遺伝子、発生、生殖、組織の人工培養、がん、免疫、ヒト細胞の生態系、ES細胞、iPS細胞、3Dバイオプリンティング、エピジェネティクス、ゲノム編集、ヒト培養の未来など多岐にわたる。

 

☆およそ380ページあるこの本は、簡単に通読できるような本ではなかった。

書かれている生物学用語で知らないものや忘れてしまったものは、生物学のテキストなどを参照し、意味を確認しながら読み進まなければならなかった。語句の意味が分かったからといって、書かれている解説がすぐに理解できるわけではない。

精読、熟読が必要である。
 

書かれている内容には最先端の研究内容に触れているものも多い。何十か所もまだ理解できないところがある。