☆このロー・ボットの書いたこの本には、今まで考えたことがなかったことが書かれていた。
★過去は、脳の中に記録されていることが、自分の記憶となって存在している。
その記憶には、思い込みによって脳内に記録されているものが多い。
過去の意味を内省、検証することで、その思い込みを修正することが可能ならば、自分の過去は変わる。
それによって、「未来の過去」が変わることになる。
★「未来の過去」が変わる。これが、私にとっての「ブレーク・スルー」なのだ。
203ページから引用する。
そもそも誰でも知っているように、過去を変えることは不可能だ。起こったことは、なかったことにはできない。しかし、脳の働きという観点で考えると、事はそれほど単純ではない。なぜなら、すでに見たように、人間の脳は現実をありのままに記録しているわけではないからだ。時間の感覚に関しては、さらに現実からかけ離れている。
脳に蓄積され、未来まで運ばれる過去は、実際に起こった過去ではない。その実態は、過去の経験から生まれた思い込みであり、その思い込みが現在の知覚にも影響を与えている。
以上、引用。
★この”思い込み”という言葉もこの本を読み解くキーワードだ。”思い込み”によって、過去のイメージは形成されている。
★過去に起こったことは、変えられないが、過去を脳に記録していく過程で、思い込みによって記憶が形成されていく。
以下、本書の重要な部分を要約してまとめてみる。
1980年代初め、ベンジャミン・リベットという研究者が、神経科学の歴史に残る実験を行った。この実験で、脳がある行動を取ることを決断するのと、本人がその決断に気づくのは同時ではないということを発見した。脳内の電気活動が起こった瞬間は、実験の参加者が意識的に決めた瞬間より、平均して0.4秒早かったのだ。
リベットの実験によって、人間の「意識的な決断」の存在が揺らぐことになった。というのは、自分で決める前から、脳内ではすでに決まっているからだ。(以上、引用)
ベストセラー『ホモ・デウス』の中でも以上のことを採り上げていて、人間には「自由意志」は存在しないのではないか、と疑問を読者に投げかけている。この『ホモ・デウス』における自由意志のはなしは、このブログ内で話題にした。評論の書庫に入っている記事で、”人間に自由意志はあるのか”というタイトルの記事です。
近代以降の人権思想などは、「人間には自由意志がある」ことを前提に生まれてきた。それだけに、リベットの実験結果は、これからの「人間の未来」の捉え方を変えることになるかもしれない。興味がある方は、世界的なベストセラー:ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』を読まれるといいと思います。(私は、全部読んでいます)
https://ameblo.jp/quanphoton/entry-12524704294.html
★以上、まとめながら引用したが、この部分は有名な話なので別に新鮮な話題ではなかったが、この先に著者ボー・ロットが述べることが、私には「ブレークスルー」だったのだ。
そこで、本書の256ページから256ページにかけて引用する。
引用開始。(ただし、重要な文を抜粋している)
リベットの実験でわかったことのは、「現在」の出来事に対する反応は自分では選べないということだ。
しかし、想像(錯覚)というプロセスを使えば、過去の出来事の意味を変えることならできる。その過去が、数分前でも、数世紀まえでも同じことだ。
過去の出来事の意味を変えると、必然的に過去の経験の中身も変わる。もちろん、出来事そのものは変わらないし、その出来事から呼び起こされる知覚のデータも変わらないが、知覚を予測する根拠となる統計的な歴史は変わる。
引用終わり。
★ここは、ちょっと分かり難いが、次を引用すると著者のいっていることが理解できると思う。
ここから引用。自由意志を使って過去の歴史の意味づけ(つまり、私たちにある物語)に新しい意味を与えると、その瞬間から、未来の自分が手にする過去が変わることになる。
この未来の自分が手にする過去が、「未来の過去」である。
以上、引用。
★ここが、衝撃的だった。こんなことが可能なんだ!これは、この本に出会った喜びだ。
さらに、引用する。
そして、未来の知覚も経験としての過去に対する反応なので、「未来の過去」を変えれば、未来の知覚も変えられる可能性がある。
過去の意味が変われば、未来の反応も変わる。それは個人でも、社会全体でも同じことだ。(以上、引用)
★長くなったので、この辺で終わりにしよう。次回、感想の(5)を書くことになるだろう。もう少し言いたいことがあるので。