詩人:新川和江「今日、見た花」...♣ | Q太郎のブログ

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アーカイブ】新川和江さん、詩への思い語る24年前のインタビュー ...

 

【今日、見た花...】

(新川和江:詩人)

 

 

 

 春です。

うらうらと日が照って、

戸外のほうが、家の中よりもずっと

暖かそうです。

郵便局に用事があるのを思い出して、

 

 

 

 

わたしは、出かける

ことにしました。 

この季節には、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「もくれん」など、

家々に咲いているのを、垣根ごしに

眺めることができますので、

出不精なわたしも、比較的まめに

外へ出かけます、

 

 

 

 

 

運悪く、花には出会えなくても、

都心を離れたこの町を、

吹く季節の風には、どこから運んで

くるのか、花のにおいが含まれていて、

ふっくらとやわらかです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自転車に乗っている少年少女 - サイクリングのベクターアート ...

 

横断歩道を、郵便局のある側へと

渡り終えた時、路地から自転車が

2台、走り出てきました。中学生と、

小学生の兄と弟、といった感じの

少年たちです。

 

 

 

 

 

先に出てきた自転車は、

上手にカーブして、すいすい走って

いきましたが、続いて出てきた

小さい子のほうの自転車は、曲がりしなに

よろけて、私の提げた紙袋に

ペダルが触りました。

 

 

 

 

 

もろに倒れかかるのではないかと、わたしは

瞬間、危険を感じて表情を

こわばらせました。

 

 

 

 

 

「ごめんなさい!」

 

 

 

 

 

おや?

 

と、わたしは、少年を見ました。

 

ハンドルをしっかりつかまえ、

少年は、立て直しに、真剣な顔つき

ですが、たしかにそれは、その少年が、

言ったものでした。

 

 

 

 

 

すると、ややあって、前方から、

 

 

 

「ごめんなさ~い!」

 

 

 

もう1つの声が、聞こえてきました。

 

 

 

先に行った少年が、後ろの声を

聞きつけたらしく、自転車を止め、

こちらを向いています。たいした

ことでなくて、ほっとしているらしいのが、

声の調子でわかります。

 

 

 

 

 

こわばっていた私の表情が、

にわかにゆるみました。何年か前、

 

ロンドンのある街角で聞いた声を、

思い出したからです。

 

 

 

 

 

「エクスキューズ ミー」

 

 

 

ぶつかるよりも前にそう言って、

敏捷に身をかわし、さっそうと

歩み去った少年の、実に

すがすがしい声を...」

 

 

 

 

 

日本では、実際にぶつかってしまっても、

ごめんなさい ひとつ言う

ことを知らない人が多い...

と私は、

 

つねづね思っていましたから、

紙袋をちょっとかすっただけなのに、

ごめんなさい を言った少年たちに

出会い、すっかり晴れやかな気分に

なっていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

交通事故 自転車と歩行者:イラスト無料

 

 

「こちらこそ、ごめんなさい。

こんなところに、立ち止まっていたりして」

 

 

 

 

 

声が届けば、私は、そう言いたい

のでしたが、自転車はもう、

両方とも、小さくなっていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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今日は、れんぎょうでもない、

 

もくれんでもない、花を見ました、

少年の心が咲かせた、「ごめんなさい」

 

という名の、たいそう気持ちの

よい花です...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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備考:この内容は、

昭和58-3-31

発行:東京書籍

著者:新川和江

「改訂 新しい国語1」

より紹介しました。