学校を卒業して、どうせ昼間は
仕事で部屋にいないんだし、休みの日だって、
くたびれて、寝ているだけだから、
日あたりの悪い、共同トイレ、共同台所の
6畳ひと間
でいいや、と借りたボロアパート。
もちろん彼女を、部屋へ呼ぶなんてできないし、
呼ぶような女の子もいない。
寝転がって手を伸ばせば、部屋にある
ものには、たいてい届くから、便利では
あるんだ、いうまでもなく、センベイ布団を
敷きっぱなしの万年床さ。
でも眠る前に、ちょっと前から
天井のシミと、天井板のズレが
気になっていたんだよ。
2階の親子と夫婦のケンカが、
とにかく派手に、毎日ドタバタやってたんで、
それで、ズレてきちゃったのかなと、
思ってたんだ。
そしたら、ある時、しばらく
洗っていないシワクチャのシーツの上に、数本の
長い髪の毛を見つけてね。
どこか、○△のオネーチャンの
髪の毛をつけてきちゃったのかなと思っていたら、
この間、眠っているときに、
「ドサッ!」と、落ちてきたんだよ。
束になって、俺の顔の上に。
驚いたなんてもんじゃないよ。
気持ち悪いし、不気味だろう。
夜中に、何十、何百本かの長い髪が、
顔の上に落っこちてくるんだぜ。恥も外聞も
なく、
「ギャ~ッ!」って悲鳴を
あげちゃったよ。そこへもってきて、
あの地震だろう。
地震と一緒に、天井板のズレが大きく
なったのか、その直後に、おれの体の上に、
「ドサッ!」と落ちてきたのが、
髪を振り乱した全裸の女だ。
ふだんなら、嬉しいかもしれないけど、
もうパニック!
「ワ~ッ!」と声をあげて
払い除け、狂乱状態さ。
その泣きわめいているところへ、
続け様に、今度は小さな子どもの○体が2つ。
落っこちてきた。
また、みごとに、おれに当たるんだ。
狭い部屋で起き上がった、おれのまわりに、
○体が3個だぜ。
もう、泣きたくなっちゃったよ。
いくら、家賃が、べらぼうに安いったって、
あんな化け物アパートは、もうこりごり。
警察の人の話では、2階に住んでいた
父親が、一家△中しようとして○にきれず、
畳の下に○体を、隠したらしいんだけどね。
もちろん、すぐに引っ越したさ。でも
あれ以来、おれは、上を見て眠ることが
できなくなっちゃった。
いつ、長い髪の毛や、○体が
落ちてくるかと思ったら、
おっかなくて...。
備考:この内容は、
1995-8-5
発行:KKベストセラーズ
編者:奥成達
著者:フランケンシュタインズ
中村恵
山口泰
高橋肇
滝口千恵
松原秀行
「子どもの読めない童話・
怪談50連発」
より紹介しました。