【シュレッダーにネクタイはさまる】...
シュレッダーマン 32歳・男性
去年の4月28日の夜。明日から連休に心弾ませ、
後片付けをはじめました。最後に
プリントアウトした書類を、シュレッダーに
かけることにしました。
残りも、あとわずかになった時、
「グッ、グッ、グッ」という
音とともに、機械が停止しました。
押したり引いたり、機械をバシバシたたいてみたり、
スイッチを入れたり切ったりして、
やっと動き始めました。
スイスイ、順調に入っていきます。
あれ? と思った時には、
すでに遅く、すごい力で私のネクタイを
引っ張るヤツがいます。
そうです! 機械に書類と一緒に、ネクタイが
送られていってしまったのです。
あわてて、引っ張ると、首が締まる!
「ゲホッ! ●ぬ~! 助けて~」
と思い、スイッチを切ろうとすると、
こんなときに限って、スイッチが、
どこにあるかわからない!
完全にパニック状態で、またしても、引っ張って
抜こうとするとゲホッ、息が詰まる!
どんどん機械は、顔の近くまでくるし、
スイッチはないし...。
そうだ! 私は、火事場のバカちからで、
30kgくらいある
シュレッダーを持ち上げ、
思い切り引っ張ると、コンセントが抜けました。
助かった、大型シュレッダーを
抱きかかえて、私は 心底命拾いしました、
と思いました。
ちょっと、安心してネクタイを外そうとすると、
これが取れない! ゲッ!
一難去って、また一難!
どうする? 5W1H? 機械を抱えて
帰るわけにも行かないし、そうだ!
ネクタイを切ってしまおう!とハサミを探すが、
こんなときに限って見つからない。
どうしようか?
と途方にくれていると、
カチャッと、
コピー室のドアが開く音がした。
「まだ、頑張ってたんですか~?」と、
同じ課のK子の声。ゲゲッ! 最悪!、と思う間もなく、
「係長、何やってんですかぁ?」と不思議
そうな顔をした次の瞬間、「ギャハハ!」と
遠慮会釈ない笑い声。
私は、おマヌケな格好で、
シュレッダーを抱きかかえて...。
「おい! なんとかしろ!」と言うのですが、
K子のやつは、
笑いが止まらず、涙だけでなく、鼻水まで
出して笑っていました...。
ひと通り笑ってK子は、私と機械を連れて
コンセント近くまで行き、電源をつなぎ、
機械を逆回転させました。
すると、不思議?
スルスルッと、バーコード状態になった
ネクタイが、機械から、吐き出されてきました。
これを見て、K子は、また大笑い。
私には、
もう怒る気力も、残っていませんでした。
本当に、●ぬかと、思った...。
備考:この内容は、
2011-4-29
発行:アスペクト
編著:林雄司
「●ぬかと思った 2」
より紹介しました。