渡辺淳一「リラ冷えの街」...その2 | Q太郎のブログ

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パクリもあるけど、多岐にわたって、いい情報もあるので、ぜひ読んでね♥
さかのぼっても読んでみてね♥♥

 

思い返してみると、あれから10年近い歳月が

 

流れていた。

 

 

 

この間、有津は宗宮佐衣子という名を

 

忘れることが出来なかった。

 

普通の知己なら月日とともに

 

薄れていくのだが、その名前だけはその時々に

 

鮮明なイメージとなって浮かび上がってきた。

 

 

 

妻と初めて▲吻したときも、●の交渉をもったときも、

 

あまり多くはない浮気のときにも、彼は

 

その名を思い出した。

 

 

 

 

 

▲■を登りつめて、もうダメだと思う寸前に、

 

宗宮佐衣子の苦痛に歪んだ白い顔が有津の頭を

 

かすめていった。●えてしまうと、あれほど求めて

 

いた欲望が白々しいほどに消え、それとともに、

 

宗宮佐衣子の顔も、おぼろげになり、もうどう思い

 

起こそうとしても蘇ってこない。

 

 

 

 

 

(露崎先輩がいったように、やはりそんな名前は

 

聞くべきではなかったのだ)

 

 

 

 

 

醒めたあと有津は、きまってかすかな悔いを覚えた。

 

聞きさえしなければ、いつまでもその名に

 

引きずられ、思い続けることもなくて済んだはずである。

 

 

 

 

 

だが、考えてみると、これは奇妙な錯覚であった。

 

なぜなら有津はまだ、宗宮佐衣子と逢った

 

ことも話したこともなかった。肝心の名前もただ

 

一度教えられただけにすぎない。

 

 

 

 

 

それは、有津京介がまだ大学院の学生出24歳の

 

ときであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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高校のときにやっていた関係で、有津は大学の

 

1年目からサッカー部に入った。キャプテンは

 

経済学部4年の落合だったが、練習中には他の

 

先輩もよく現れた。

 

 

 

 

 

 

露崎政明は有津より5つ上の先輩で、医学部を出て

 

3年前に医者になっていた。専攻は婦人科で

 

あったが、大学病院にいたので暇をみてはグラウンドに

 

現れ練習を見ていた。

 

 

 

 

 

秋であった。その日は朝から雨で練習もなかった。

 

夕方、有津は、部屋にたむろしていた4~5人

 

の学生と、雑談をしていた。そこへ、ふらりと露崎が現れた。

 

 

 

 

 

入るなり露崎は、部屋を見回した。

 

彼は、部員の挨拶に軽くうなずいただけで、

 

しばらくはものを言わず、煙草をふかしていた。部員たちは

 

少し戸惑い、また前の話に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「どうだ、君たち、アルバイトをしないか?」

 

 

 

2本目の煙草を吸い終わった時、見計らったように

 

露崎が言った。

 

 

 

 

 

「どんな仕事ですか、先輩?」

 

 

 

どうせ、暇をもてあましている連中である。

 

彼らは、先輩の周りを取り囲んだ。

 

 

 

「少し変わった仕事だが...」

 

 

 

露崎は、一通り皆の顔を見渡した。

 

 

 

「他の連中には、言わないでほしいんだ」

 

 

 

「言いませんよ、何です?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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先輩の思わせぶりな態度が、若者の興味をそそった。

 

 

 

 

 

「実は...」

 

 

 

露崎は皆に顔を近づけ、それから声を潜めて行った。

 

 

 

「キミらの●ーメンをほしいのだ」

 

 

 

「ザー▲ン?」

 

 

 

向かい合っていた竹岡が、素っ頓狂な声をあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ、●ーメン、●液だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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少し、怒ったように言うと露崎は、5人の顔を順に

 

見回した。5人は瞬間、顔を赤らめた。それから

 

照れたように互いの顔を見合わせた...。

 

 

 

 

 

 

 

備考:この内容は、

昭和59-2-25

発行:新潮社

著者:渡辺淳一

「リラ冷えの街」

より紹介しました。