【はじめに...】
私は3歳までフランスで育ち
さらに、小学校の高学年と、中学校の数年間を、
フランスの田舎に戻り、過ごしました。
日本で暮らしていたときも、
フランスには、年に何度も旅行で足を
運んでいたため、ずっとフランス人の生き方を
身近に感じていました。
ダブルアイデンティティの立場で
客観的にフランス女性を観察すると、
彼女たちは、恋愛をしているときも、
仕事をしているときも、ルールに
とらわれることなく、自由に生きている
ように見えます。他人にどう評価されるかを
気にすることなく、自分自身の
ものさしで、幸福感や正義感を測り、自由を
享受し、人生を謳歌しているように
感じるのです。
本書は、そんなフランス女性たちの
とらわれない生き方を知ってもらう
ことで、何事にもルールを大切にする
日本女性の悩みや迷いを解決する
きっかけになればという思いで、執筆
させていただきました。
数年前、大きな話題になった
「ロストジェネレーション」。私たち
30代は、まさに、そのロスジェネ世代でしょう。
豊かな時代に生まれ育ったにも
かかわらず、社会人になる前に、バブルが
はじけ、就職氷河期へ。思いどおりの
就職ができなかったり、そのまま非正規
社員になったり、フリーターになったり...
そんな「さまよえる世代」です。
しかも、女性にとっての30代
という年齢は、結婚に出産、子育てと、一生で
一度あるかないかの決断を迫られる
課題が、一気に押し寄せるときでも
あると思います。
考えてみれば、少子化問題や
キャリアアップの問題など、
日々、ニュースの
中で踊っている言葉も私達の肩に
重くのしかかってくるものばかりです。
私たちの少し上の40代、50代女性を見ると、
確固たるキャリアを築いて、
パワフルに生きているように感じるし、
一方、下の10代、20代に目を向けると、
柔軟性を持って多様化した
価値観の中から、自分に合う生き方を選び
取っているようにも見えます。
世代的にも時代的にも、「ロスト」＝迷子
になったかのような私たち30代...。
だからこそ、今、いろいろなことを
問いかけあっていると思うのです。
なにごとも、自分のものさしで、判断して、
まわりと違う生き方を追求する
フランス人。
一方、日本人は、「和をもって貴しとなる」、
みんなでつくったルールを
重んじ、調和することを大切にして、
共同体を上手に運営するのに長けてきました。
でも、調和を大切にするあまりに、
自分は他人からどう見られているのかと、
周りを見渡して、他人と
違うことにストレスを感じたりもする。
私は、小さい頃から、何事も
人に合わせるのではなく、つねに自分で
決めていました。それは、いつも両親から
個性を大切にすることを教えられてきた
ことと無縁ではないでしょう。
振り返れば、いまの私が、少々、肩の力が抜けて
気持ちを楽にして生きているのは、
個人主義のフランス人のように、
「人目」を気にしなくても苦にならない
からかもしれません。
でもそれは、フランス人の
父と日本人の母を持ち、「ダブルアイデンティティ」
として、生まれたことと、
どれほど関係することなのか...。
さまざまなジャンルでいきいきと
活躍している8人のフランス女性に実際に
お目にかかり、その仕事感や恋愛観を
取材し、彼女たちの生き方から、
日本の女性たちに新しい生き方の
ヒントを提案することはできないだろうか？
と考えたのです。
日本女性の素晴らしさに、さらに
フランス女性ののスバ亜ｒしさを加えた、
次世代の「ハイブリッドな魅力を持った、
つまり日本人女性の奥ゆかしさと、
フランス女性の強い自我を
かけ合わせたような女性の姿が
あるのではないだろうか？
迷っている私たちだからこそ、
そんな新しい生き方を見つけられるの
ではないか...そう思っています。
悩むからこそ、人は解決する術を
見いだせる、悩む力は解決する力。
そして、生きる力だと信じています。
迷える同世代の日本女性たちが、
少しでも、今よりももっと豊かな気持ちに
なれますように。そして、確かな
自分を持って、人生を謳歌できますように。
そんな願いを込めて...。
2011年 春
滝川クリステル 
備考：この内容は、
2011-7-5
発行：講談社
著者：滝川クリステル
「恋する理由
～私の好きなパリジェンヌの生き方～」
より紹介しました。