「オートキャンプ」...
夏が終わる頃なんですけどどもね、
仮にA君と、B君として
おきましょうかね。
「おい、キャンプでも、
いかないか?」
これと言ったアテは、ないんですが、
まぁ、日光をあちこち回ろうか?
という話になった。
それで、ワゴン車で回るんですけれどもね、
「それは、いいね!」
って、いう話になって、
まぁ、速い話が、
「オートキャンプまがい」
ですよね。
で、2人ですから、
やってきた。
それで、気持ちがいいんですよね。
あの辺り...。
もう、季節は、だいぶ、秋に
入りかけているんで、
風もヒヤ~ッとくるし、
赤とんぼは、飛んでいるし、
紅の景色に、だんだん
染まって来ているんですよね。
「わ~っ、いいなぁ」
この時期の日光というのは、
気持ちがいい。
それで、ず~つと、ドライブしながら、
いい場所探そうか?
って、ことで、あちこち行くと、
そもそも、いい場所というのは、
みんなキャンプやっているんですよね~。
「あ~、みんな、やってんだなぁ」
「じゃ、他を探そうか?」
って、ことで、峡谷ですよね。
さすが、ここ景色もいいし、
ちょうどいい広さもあるんですよ。
「あ~、ここいいなぁ...」
他の人が、いないんですよね。
「何だ、こんないい所なのに、
誰も他にいないなぁ...」
「じゃぁ、ここにしようか?」
で、ワゴン車を停めて、
木々の幹や枝にロープを止めて、
ワゴン車にもかけて、
シートで、屋根ができるんですよ。
ちょうど、ワゴン車のドア開けて、
それで、ず~っと、シートを伸ばして、
屋根ができた。
で、ロープ上から明かりをたらして、
照明ができた。
下にテーブルをおいて、BBQとか、
簡単なことしか、しないんですよね。
男2人ですから。
後は、寝るだけですから、
秋の紅葉を見ながら、
2人は、缶ビールで、
「カンパ~イ!」。
あたりは、だんだん闇に包まれて、
時々、風で明かりが揺れて、
いるわけですよね。
「あ~、ちょうどいい。
暑くないし、涼しいし、
ちょうど、いいなぁ...」
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時間が過ぎて、
「お~い、ぼちちぼち、休もうか」
「そうだな...」
車のシートを倒して、2人、
しゃべりながら、時間が経ち、
気がつくと、1人は、
もう、眠っているんですよね。
「あ~、寝ちゃったなぁ...さぁ、」
と思っても、なんだか眠れなくて。
「あ~、眠れないなぁ...」
風が、ヒュ~ッと、
吹き抜けていく。
明かりがフワ~ッと、揺れる
すると、ヒュ~ッという音とともに、
どこからか、
「お~い!」
「お~い!」
と、聞こえるんでよ...。
「うん? 何だ?
どこから聞こえるのかなぁ?」
と思っていると、
すると、横の窓ガラスを、
コンコン、コンコンと、
ノックされたんですよ。
見ると、男が覗いているんです。
「何だろう?」と思って、
ドアを開けたら、男が、
車内に入ってくるんですよ。
「あ~っ!?」
「すいません~」
よく見たら、その男、
口の所と、目の所、
血が滲んでいるんですよね。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ...
すいません。車が崖から落ちて、
中にまだ、連れがいるんですけど、
助けてください~!」
「は~い?」
「中にまだ、連れがいるんですよ!
助けてください!
自分も谷底から、崖をどうにか
よじ登ってきたんですけれど、
すいません、お願いします。
助けてください!」
「え~っ、それはたいへんだ!
ちょっと、待って」
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ...。
すいません。助けてください!」
そこで、A君は、隣で寝ている
B君に、
「おい、おい! 起きろよ!」
と言っても連れは、
なかなか起きてくれません。
「しょうがないなぁ~」
そこで、A君は、
懐中電灯を持って、1人で、
現場を見に行くことにした。
男の後を付いていくんですが、
男は真っ暗な中を、
どんどん1人で先に
歩いていく...。
で、付いていくほうは、
遅いですからね。
A君、はいはいと 付いていくと、
男は、先に立って待っていて、
こっちを振り向いては、
手招きして、とっと、とっとと、
歩いていくんですよ。
男は、崖から車で落ちて、
よじ登って来たわけだ。
普通なら、あちこちケガをして、
いるだろうに、どんどん
早く歩くんですよね。
え~っ!?
おかしいなぁ。よく闇の中を
スイスイ歩いていけるなぁと、
思っていたんですけどね...。
「ここなんですよ、
見てもらえますか!?」
「えっ! どこ?」
Aくんは、懐中電灯で、
崖の下のほうを、照らして見ます。
星明かりもあるんですがね、
渓谷の下のほうですから、
真っ暗で、何も見えないんですよ。
「見えないなぁ...
どうしよう?」
「すいません、もう少し前に出て
見てもらえませんか?」
「ここですか?」
「ここなんです。もう少し、
前に出て、見てもらえません?
もうすぐ、そこなんですけどねぇ...」
A君は、立ち木につかまって、
足元を見た瞬間、
足元の上が、崩れたんですね。
ガ~ッ!
わ~っ!
あ~、びっくりした。
これ、良かった、立ち木を
掴んでいて...。
で、この男、闇の中で、
「ニタ~ッ」と、
笑っている。
「うっ...! 気持ち悪いなぁ。
お兄さん、よく、こんな所、
よじ登って来たよねぇ...」
「すいません。もう少し、そこです」
懐中電灯の明かりですからね。
筋になって、ボワ~ッと、
光っているんですが、そんなに、
強いもんじゃない。
「あれ?
あの車かなぁ...?」
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【次回予告...】
ふぇっ、ふぇっ、ふぇっ...。
備考:この内容は、
「稲川淳二メモリアル・遺言」
37万回視聴・9ヶ月前
”超絶怒涛の特別編4・稲川淳二が噺す
5時間超えの怪談オンパレード”
より紹介しました。