SF小説・星新一「鳥の歌」...

SF小説「鳥のうた」　星新一：著

　R氏は、友人のA博士の

研究所をおとずれ、話しかけた。

「この頃は、どんな研究を

やっているのですか？」

　「鳥ですよ。いま、ごらんに

いれましょう。いや、お聞かせするといった

ほうがいいのかな？」

こう言いながら、博士は1羽の

ハトをカゴから出した。豆をやり、頭をなでてやると、

そのハトが、鳴き出した。しかし、

普通の鳴き方ではなく、童謡の「ハトポッポ」の歌の

メロディーで鳴いたのだ。

R氏は、目を丸くした。

「これは、驚いた。どうして、

こんなことになったのですか？

ぜひ、説明してください」

R氏は、知りたかった。博士は承知し、

研究室の中を案内し、ある物を指さした。

　

「ここにあるのが、私の

作ったロボットのハトです。

ハトポッポのメロディーで

鳴く、オルゴールのようなものです」

「見たところは、本物そっくりですね」

「生まれたばかりのハトを、このロボットの

ハトと一緒に育てたのです。すると、

ハトは、それにつられ、だんだん

歌うようになったのです」

「なるほど。外国人のあいだで育つと、

自然に、その国の言葉を覚えてしまう

ようなものですね。ほんとに面白い」

　R氏が、あまり感心するので、

博士は今度は、カナリヤを出してきた。

「これも、おなじ方法で育てのですが、

もっとよく歌いますよ。

お聞かせしましょう」

　そのカナリヤは、美くしい声で

シューベルトの曲を歌った。R氏は、

ため息をついた。

「すばらしい。コマーシャル・ソングを

歌えるようにして、どこかの会社に

持ち込めば、さぞ、儲かることでしょう」

　「いや、私は、商売にするつもりなど

ありません。鳥の声を、学問的に

研究しているだけなのです」

R氏は、鳥の声を聞いていたが、

やがて博士に言った。

「これを1羽、ゆずってください。代金は、

いくらでも払いますよ。じつは、今日は

私の結婚記念日なのです。妻への

贈り物にしたいのですよ。お願いします」

　「そうでしたか。これまでに、育てるのは

大変でしたが、他ならぬあなたです。

おゆずりしましょう」

R氏は大喜びし、大金を払い、

そのカナリヤをもらうことができた。

家に帰ると、R氏は婦人に言った。

「おまえを、びっくりさせるものがあるよ」

だが、婦人のほうも、こう言った。

「あら、あたしもよ。あなたを

ビックリさせるような、

すてきなものを買ってきたの。

何だと思う？」

「さあ、何だろうな？」

「カナリヤよ。ほら」

　R氏は、本当にびっくりした。

しかも、そのカナリヤは　

エサをやると、いろいろな

曲を次々と上手に歌うのだった。

R氏は聞いた。

「これを、どこで買ってきたのだい？

とても高かったのだろう？」

「いいえ、安かったわ。あたしの

友達が持っていたのを、譲ってもらったのよ」

「しかし、これだけにするには、

とても手間がかかるはずだ」

「カナリヤ・米津玄師」

「たいしたことはないそうよ。その人は、

鳴かないカナリヤが、かわいそうだからと、

小さな装置を作ったの。それを手術で

首に埋め込んだのよ。エサをやると、その装置が

動き、カナイヤの声帯に作用して、

こんな風に歌ってくれるのよ」

「何だ！？　そんな仕掛けができたのか？」

「さあ、あなたの買って来たものを、

見せてちょうだい」

　R氏は、困ってしまった。高いお金を

払って、ムリに手に入れて

損をしたなと残念がった...。

ダイソン...。

備考：この内容は、

令和3-4-30

発行：KADOKAWA

著者：星新一

「きまぐれロボット」

より紹介しました。

一部、脚色した点、

お詫びします。　

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【おまけ...最近の話題】

「だいち4号」

　　

山本選手の1mm

石川の1mm。

これにて、女子は主要国際大会

メダル獲得は10年ぶり。

男子は、47年ぶりの獲得となる...。

男女とも VNL 銀メダル獲得。

夫婦もいれば、

兄妹もいる...。

めでたし...。