VOL.35 trip... September. 2007
『I COME WITH THE RAIN』の撮影のために、
香港のホテルに着いて、
「あ~、今回はこの部屋か?」と思って、ドアの前に立つ。
フロントで渡されたカード・キーを
ウィ~ンって、
差し込んで、ロックを
解除して部屋に入る。
そうすると、ホテルからのウェルカム・フルーツの横に、
「ん? なんだろ、これ?」
ってもんがあるの。見ると、カードにジャッキー(チェン)
の名前。
それと一緒に、お茶のセットだったり、お菓子のセットが
置かれている、ほんとにびっくりさせられるし、
すごくうれしい心づかいだよね。
幼少期からドキドキさせてもらった人が、そんなことして
くれるんだよ。いつか、ちゃんとお礼を言いたくて、次に香港に
行ったとき、一緒に
食事できればいいなと思っている...。
ジャッキー自身、僕と入れ替わりで今度、
新宿で撮影があるみたいだから、
滞在するホテルを調べて、同じこと
してやろうって、考えているところ...。
今、パスポートが、自分にとって日常アイテムになっている。
自分の国を出たり、他の国に入ったりするのは、
ちょっとめんどうなものだよね。
空港では、セキュリティー・チェックのたびに、
アクセサアリーやベルト、
全部はずして、着ていたシャツやジャケットを袋代わりにして、
その中にドンって、全部入れて通過してる。
荷物自体はもう、必要最小限。
香港では、すごく快適に過ごさせてもらっているけど、
「考え方が、ちょっと安易だったかな?」
ってこともあったんだよね。
俺、食事はなんでも
いい派なのね。
「2日連チャンで、イタリアンは許せない」とか、
一切ないから。
5日間同じメニューでも構わない。
でも、一緒に行動するスタッフは、
そういうわけにはいかない。
「きのうはカジュアルなレストランだったから、
今日くらいは、最上階のレストランに行こう」みたいな。
でも俺、ホテルでは、
ルームウェアだし、現場とホテルの行き来は
普段着。ほかには、何も用意していなかった。
「木村さん、フォーマルなシャツとかジャケット、
ありますか?」って聞かれて
「持ってるわけね~じゃん」って言ったら、
「それがないと入れません」って。
ドレスコードのある店だったんだよね。
スタッフは、みんなちゃんと持って来ているの。
「入れないものならしょうがないから、
俺、別にいいよ、みんな行ってくれば?」
って、言ったんだけど...。
備考:この内容は、
2011-9-30
発行:集英社
著者:木村拓哉
「開放区 2」
より紹介しました。