役を通して見える、まっすぐな芯の強さと純粋さ。
それは間違いなく、”高橋文哉”という人間の魅力のひとつだ。
10年の時を越えて紡がれる、映画「からかい上手の高木さん」では、
突然、目の前に現れた高木さんに戸惑う西片を、
みずみずしく演じて、
その魅力を見つめさせてくれる。
...本作はコミック原作の映画化ならではの
透明感と、恋愛映画の名手。
今泉力哉監督らしいリアルな青春感が
あいまって、実写版だからこその魅力が溢れて
います。西片を演じるにあたって
大切にされたのは?
高橋文哉> たくさんあります。一番は ”まっすぐ、
純白、子ども心” ですね。でも、皆さんが、
想像する子ども心とは、おそらくまったく
違って、子供の頃に持っていた価値観や
感性をそのままに大きくなった感覚を、
大切にしてやってましたね。
今泉監督とは、役について
相談することは、ほぼなかったんです。
僕が作り上げたものを、まず見て
いただいて、それから、”もうちょっと、
こうしてみたい”とか、監督が言ってくださる
ことにアジャストしていく感じでした...。
今泉監督は、まず役者にやらせてくださる。
それは信頼してくれている証拠だと
感じていました。原作とは、もちろん色が
違いますが、現場にいる方たちは、監督、
スタッフも本当に原作を
リスペクトしているんです。
なので、皆さんが、原作を読んで感じているであろう、
高木さんと西片にしか出せないものが
そのまま映画にある。その振り幅みたいな
ものを楽しんでいただけたらいいなと、
思います。
...高木さん役の永野芽郁さんとは
初共演ですが、現場での永野さんと高橋
さんも、こんな雰囲気だったのかと
思わせるほど、高木さんと西片の空気感が
ナチュラルですよね?
Fumiya> 本当に、永野さんとでなければ、出せない
空気感もたくさんあったでしょうし。
永野さんの高木さんだからこそ、生まれた
西片の表情もあるでしょうし。永野さんは
僕とはキャリアが全然違うので、役者と
してもすごく前を走ってくださっている
感覚があって、僕は後ろをついていって
いる感じでした。
現場の居方も含めて。
いろいろ助けていただいたなと思います。
ロケ地の小豆島では、1ヶ月弱くらい
撮っていましたが、永野さんとは2人の
シーンも多くずっと一緒だったので、
最初の頃は、”どこにご飯を食べに行くか?”
”ここが美味しいらしいですよ”と、
ごはん屋さんを、お互いにリサーチして、
報告し合っていました。そのうち、小豆島の
ごはん屋さんは行き尽くして、高松にも
足をのばすようになってきて。
”休みの日には、どこに行こうかな? とか”、
そういう話をずっとしていました。
...高木さんと西片が教室で話す
シーンがとても印象的です。2人の会話に
引き込まれてしまって。すごい長回しだと、
いうことに途中で気づきました。
Takahashi> でも、長回しだったことを、僕も
試写を見るまでわかっていなかったんです。
”長く回すよ”なんて、現場では言われ
ないので。”じゃあ、頭から最後までやって
みますか?” みたいな感じで、始まるんです。
でも、やっていても長いなと感じる
ような会話じゃないですし、もうセリフは
覚えているとかいう次元ではなくて、勝手に
出てくるので、ただ普通に会話してる
ような感覚はありましたね。
試写のときには
気づいたら、僕も見入っていましたね。
で、途中で ”そうだ、このシーンは長く
撮ってたな” と思い出して。いつ、寄り
(のカット)入るんだろう?” とか、”今泉
さんは、ここで寄りを入れるんだ” とか。
そういう今泉さんの感性も、映画を観て
いて面白かったです。
...作品の舞台であり、原作ファンの間で、
「高木さんの聖地」として親しまれて
いる小豆島での全編撮影も貴重ですよね。
たかはしふみや> 「小豆島にいて、目の前の風景を
観るたびに、”西片はこれを20何年間見て
生きてきたんだな”と感じていましたし、
ごはん屋さんに行っても、”もしかしたら
ここにも来ていたのかな?” と思ったり。
小豆島って、どこにいっても『からかい
上手の高木さん』という作品を知らない人が
いないんですよ。それだけ、この島に
大きな影響を与えているのを体感して、
僕もどこにいても西片のことを
考えていました。
撮っているときは、この島で
撮影できたから、こういうふうに西片を
演じられたんだな? とは思わなかったんです。
でも、出来上がった映画を観たときに、
1秒も小豆島以外で撮ってないから
こそ、すごく大きな枠で、説得力をもって
いるなと感じました。前編小豆島ロケを
実現してくださってありがたいなと。
この作品は、小豆島以外での撮影では
できなかったと思います...。
備考:この内容は、
令和6-5-21
発行:近代映画社
「screen」
より紹介しました。