現在、世界中の技術者の
注目を集めているリン酸鉄
バッテリーだが、本質的には、
BEVの欠点の1つとされて
いる航続距離で不利なことは
変わらない。
要するにエネルギー密度の低さが課題なのだが、
三元系へのアドバンテージと
しては、高価な素材を
使わない点が挙げられる。
コバルトと、ニッケルという高価な
素材に代えて、鉄とリンという
極めてありきたりで安価な
材料を使うぶん安いのだ。
おそらく今後、原材料不足の
見地からも、採掘の環境負荷の
見地からも、バッテリーのリサイクルは
義務化されていくだろう。
そうなったときに困るのが、リン酸鉄バッテリーだ。
リン酸鉄バッテリーの場合、リチウムの含有量は4%程度
と言われているが、三元系におけるニッケルの代わりに
大量に含まれているのが、「鉄」で、3~4割。
その次が、マンガンで2割程度。
鉄とリンは、リサイクル費用が
バージン材料より高くつくため、
リサイクル素材として、ほぼ、
商品価値がない。
価値がないだけなら燃やして埋めて
しまえばいいのだが、もう1つの懸念は、
マンガン含有量の多さだ。マンガンは生殖毒性のほか、
水性生物への長期的影響なども指摘されており、
リサイクルせずに廃棄すると、土壌汚染など、
問題が多い。
しかもマンガンもまた、単価が安い材料だ。
つまり、リン酸鉄バッテリーは、リサイクル時に
再生される材料に市場価値がないので、
ビジネスにならない。
となれば、新車の販売時に、リサイクル費用が加算される
可能性が高い。そのときに果たして、三元系と比べて、
安価かどうかは、かなり怪しい。
エネルギー密度で遅れをとっても、
価格が魅力なのが、特徴だが、
今後も通用するのかどうかの
懸念があるわけだ。
このあたりは、バッテリー
リサイクル制度がどうなるかによる。
包括的にバッテリー全部に
義務化されるのか、
マンガンの含有率で区別されるか。
それは、制度ができてみる
までわからない。
三元系は原材料の調達に、
リン酸鉄系は廃棄問題と
リサイクル問題が課題として
残る...。
備考:この内容は、
2024-1-10
発行:講談社
「ベストカー」
より紹介しました。
やっちゃえ、
OSSAN!