「ネグリジェのオニ婆婆に追いかけられる」...
(29歳 男性 雑誌編集)
小学校の、低学年の頃だったと思う。
4つ離れた姉とケンカして、肉体的に
コテンパンにやられた私は、どうにか
仕返しをしようと考えていた。
”そうだ! 寝ている姉を、坊主にしてやろう!”
今、思えば、とんでもないことだけど、
その頃の私にとっては、それが正義だった。
ある夜、ハサミを抱いたまま就寝。
隣で寝ている姉が、スースーと寝息をたてたのを
見計らって、ハサミを握り姉の枕元に座った。
ジョキ、ジョキ...10cmくらい
切ったところで、目が覚めた姉は、すぐさま事態を
把握し、大声で叫んだ。
「おかあさ~ん!」
いきなり、奥の手を出された私は、
パジャマのまま、家を飛び出した。
近くの公園に 身を潜める。
すると...、母が追ってくる!
ネグリジェ姿に、手には、
ハサミを持っている。
風になびくネグリジェと 怒りに満ちた顔。
その姿は、教科書で読んだ
”なんとか物語”のオニババそのままだ。
●されるかとも思った私は、逃がれるべく、
潜んでいた木の影から立ち上がろうとした。
だけど、足に力が入らない。立つこともできない。
あまりの恐怖に腰を抜かしたのだ。
まもなくオニ婆婆に追いつかれ、
泣きながら土下座する私。
そろそろ30歳。腰を抜かすような
出来事に出会ったことは、あれ以来まだありません。
お母さん、あのときは、
●ぬかと、思った...。
備考:この内容は、
2010-7-22
発行:アスペクト
編著:林雄司
「●ぬかと思った 8」
より紹介しました。