”この世は、目に見えるものだけだと思ったら大間違いだ!”
【言葉が持つ情景と、
リズムを大切にしたい...】
一番大事に思っている言葉はね、
「チコタンチコタン、プイプイ、
チコタン」。父の言葉なの。
言葉に着いて尋ねると、笑顔で
そう答えてくれた角野栄子さん。
「魔女の宅急便」の作者で、日本を
代表する童話作家として知られています。
「まだ、私が幼かった頃、父は顔を
合わせるたびに、この言葉を歌うように
口にしていました。意味なんて
ないんだけど、父の口調が、心に
ずっと残っていて。その言葉の中に、
当時の記憶が詰まっている
気がするんです」。
角野さんは、言葉を「感覚」で
捉えていると語ります。その言葉が
持つ情景やリズムが、より普遍的な
ものとして心に響くのだとか。
「言葉の意味も重要だけど、それは
また、時代の価値観によって変化
するもの。その1点にフォーカスする
のは危ういと思うんです。
だから私は、読んだり聞いたりしたときに、
その景色がふっと浮かんで来るような、
言葉が持つ情景を大切にしたい。
同時に、語感やリズムもまた、大事
な存在です。太古に遡れば、
言語はきっと、音のリズムから
生まれたものでしょうから」
お父さんの言葉でもう1つ。
思春期の頃に言われて、忘れられない
フレーズがあるそうです。
「『この世は、見えるものだけだと
思ったら大間違いだ』。先走って
見えるものばかりを軽率に追うな
という意味でしょうが、当時の私は、
「古臭い」とまったく聞く耳を持ち
ませんでした(笑)。
5歳の頃にお母さんを●くした
角野さん。お父さんのこの言葉は、
そんな角野さんの心に、
後に、深く響くことになります。
「母を●くしてから、私はずっと、
「母は、どこにったんだろう?」と、
見えない世界を探っていたんです。
●くなった人、
今いる人、モノ、そして言葉たち。
その背景には必ず歴史があって、
多くの人たちの思い出がある...。
備考この内容は、
2024-1-18
発行:宝島社」
「心が楽になる言葉。
豊かにする言葉」
より紹介しました。