「前田敦子」
合宿は、一事が万事、こんな調子だった。
みなみは、部員たちとコミュニケーションを
はかることが、なかなかうまくできなかった。
「大泉洋」
おかげで、部員たちを観察するという計画も、
思うようにはかどらなかった。本当は、
「瀬戸康史」
エースの慶一郎や監督の加地とも話して
みたかったのだけれど、なかなかチャンスを
つかめなかった...。
慶一郎は、いつも少数の決まった仲間と、
一緒にいるが、1人のときは、誰も寄せ付けない
雰囲気を醸し出していた。
一方、加地も、さすがに寄せ付けないと
いうほどではなかったが、部員とあまり
話をしたがらない雰囲気があった。
加地は、慶一郎だけではなく、ほかの部員たちとも、
距離を置いていた。監督のくせに、
どこか他人行儀なところがあった。そのため、
みなみも。なかなか話すチャンスを
つかめなかった。
合宿も最終日に成る頃、みなみは、やること
なすこと空回りするようで、暗澹（あんたん）とした
気持ちにさせられていた。滅多なことでは
落ち込まないのだが、それが4日も続くと、
さうがに、暗い気分になっていた。
それでも、へこたれるわけにはいかなかった。
そんな時、みなみはもう一度、『マネジメント』
を読んで見るのだった。読んで
、
その中から改めて、状況を改善するための
ヒントを見つけ出そうとした。
『マネジメント』 を読みはじめて以来、
みなみには1つの信念が芽生えていた...。
...
迷ったら、この本に帰る。
答えは、必ずこの中にある。
そう思うのに、はっきりとした理由が
あるわけではなかった。それは単なる直感に
すぎなかった。
しかし、みなみは、その直感をだいじにした。
考えることが得意ではない彼女にとって、
直感は、これまでずっと自分を助けてきて
くれた大切なナビゲーターだった。その声に、
ここでも従おうとしたのである。
「石塚英彦」
合宿最後の夜も、夕食が終わった後、
誰もいなくなった食堂で、みなみは1人
『マネジメント』を読んでいた。
不思議なことに『マネジメント』を
読んでいると、みなみは落ち着くのだった。また、
失った自信も取り戻せたような気になった。
それを読むと、元気が出た。この頃のみなみは、
そんなふうに、自分を鼓舞する意味でも、
その本を活用していた。
そうして、いつしか夢中になって
読みふけっていた時だった。
「何、読んでいるの？」
と、突然、後ろから声をかけられた。
「池松壮亮」
それで、飛び上がるほど驚いたみなみは、
にらむようにして、後ろを振り向いた。
初めはキャッチャーの次郎に驚かされた
と思ったのだ。
しかし、そこに立っていたのは、
次郎ではなかった。二階正義という、
2年生の補欠の選手だった。
「峯岸みなみ」
みなみは、正義のことはもちろん知っていた。
彼は、合宿ではじめて会ったのではなく、
夏休み前の練習にも参加していた。
数少ない真面目な部員んの1人だったからだ。
また、正義には大きな特徴もあった。
それは部員の中でも一番野球が「ヘタ」だ
ということだった。
「川口春奈」
正義の下手さ加減は、誰の目にも
明らかだった。キャッチボールさえ、
まともにできないのだ。
投げたボールが相手の胸元へ収まる
ことは、ほとんどなかった...。
その実力は、もしかすると、マネージャーの
文乃以下かもしれなかった。文乃も、球拾い
をしたときなどに、ボールを投げることがあったが、
正義よりよっぽどしっかりした
コントロールをしている。
「西田尚美」
その一方で、正義はまた真面目さでも
群を抜く存在だった。練習にはいつも一番乗りで、
グラウンドを後にするのもいつも
一番最後だった。
しかも、正義は、後片付けなど他の部員が
いやがることも率先してやった。彼がいつも
グラウンドを最後に後にするのは、誰よりも
遅くまでグラウンド整備をしているからだった。
この頃までに、みなみは、それなりに
正義と親しく話すようにはなっていた。
雑談くらいは話すようになっていたが、それでも、
自分の目標を話したことは一度もなかった。
それは、万年補欠の正義に、甲子園の話を
しても仕方がないと思っていたところが
あったからだ...。
備考：この内容は、
2011-1-26
発行：ダイヤモンド社
著者：岩崎夏海
「もし高校野の女子マネージャーが
ドラッガーの『マネジメント』を読んだら」
より紹介しました。
【読者からのコメント...】
Q太郎さんへ
いつも楽しく読まさせて頂いています。
「Q太郎のブログ・もしドラ」は、
その①から、その②の間が10年開いて、
その時生まれた上のお姉ちゃんは10歳、
その後生まれた下の男の子は、5歳になりました。
このペースでいくと、最終回は、
いつになるのですか？
はっきり教えて下さい。 
毒入りりんごより
毒入りりんごさんへ...
そうですね。
この書籍は、266ページあり、
14年で、45ページ進みましたので、
単純計算で残り221ページあるので、
あと、69年は、
かかりそうです。
お詫びします。
テヘペロ...。
Q太郎より