「ここ、とっとっと?」
佐賀県での落語会、一席伺っていると、
おばちゃんが とことこっとやってきて、
最前列の1つだけ空いている席を指さし、
「ここ、とっとっと?」
私は、高座で おっとっと。
おばちゃんは、「ここ 空いてますか?」
と尋ねたらしいんですね。

「ここは、あなたが取った席ですか?」が、
「ここ、取っとっと?」になり、
「こことっとっと?」
になったんですね。

その晩、打ち上げの席で、「ききき~?」
なる言葉を教わりました。意味は
「(ここまで)来れますか?」で、
「来ききる?」が
「ききき~?」と変化したようです。
どう聞いても、急ブレーキの音ですが...。

「ひよしがり」
江戸っ子は、「ヒ」と「シ」の発音がよく
逆転しますから、ひよしがりは「潮干狩り」(しおひがり)
のことです。
では、「ヒンブンのショウヒのヒャヒン」
とは、何のこと?
正解は、「新聞の表紙の写真」です。
「造作」
江戸弁東京弁は即「べらんめえ調」では
ありません。やわらかいいい言葉もあるんです。
造作はこの場合、「ゾウサク」ではなく
「ゾウサ」と発音します。

ゾウサもないことです...大したことではありません。
ゾウサをかけます...ご面倒をかけます。
という具合です。
「ざっかけない」
この言葉なんかも東京を代表する言葉の
1つではないでしょうか?
「ざっかけない店」と言えば、気取るところのない
居心地のいい店というニュアンスで、●語に
なりつつありますが、下町辺りで聞くとホッとしますね。

「かみいさん」
これも、懐かしい言葉です。でもまだ、
お年寄りの口からときどき聞きます。
「かみいさん」は、髪結さんで、今で言う美容院のことです。
「カミユイさん」でなく、「カミイさん」。
そこが東京言葉の味なんですね。あ、それから、
「パーマ屋さん」と言う人、けっこう
まだ いますね。
「お師匠さん」
オシショウさんではありません。
キリっと、「オッショサン」なんですね。色々あるので、
少し並べましょう。右が東京言葉です。
こしらえる...こさえる。
捨てる...うっちゃる。
しうつ...(何と)手術のことです。
おれ...おいら(大人でも言います。)
あたし...あたい(子供時代)
服装...なり
遊び...あすび
それから...そいから
教える...おせーる
見つからない...めっかんない
まっすぐ...まっつぐ
どう言ったらいいのでしょう...なんてったらいいんだろう
どこへ行く...どけー行く
大概にしなさい...てーげーにしゃあーれ
何を言ってるんだ...ってやん
キリがありません。いくらでもあるのです。
山の手には、やはり●語になりつつも
「ごきげんよう」や「ごめんあそばせ」が
生きていますしね。あ、前座のころ楽屋で
怒られた話をしましょう。
「ド真ん中」という言葉を使った時です。
いっせいに小言が降ってきたんです。
「バカ、それは関西弁だ」
「それをいうなら、真ん真ん中だ」と、ビックリし、
何もそこまで言うことないんじゃないの と思いましたが、
今では感謝しています。
そういう
年寄りがいてくれたおかげで、
耳が鍛えられたのですから...。

備考:この内容は、
2009-8-20
発行:光文社
著者:立川談四楼
「もっと声に出して笑える日本語」
より紹介しました。


