【見栄で入った三ツ星レストランで、
メニューがわからず大エラー】
ツアー中に親しくなった Jクンと Sさん、パリでの
自由時間をいっしょに過ごすことにした。
真鍋監督> タコはフランス語で、
「タコハッポ~ン」なら、
イカは、
「イカジュポ~ン」
サオリン> ポカ~ン!
2人とも、フランスは、はじめて...。
言葉なんか、まるでわからない土地で、同じ日本人同士、
お互いの親密度は高まっていく...。
さて、そろそろディナーの時刻。
「三つ星クラスのレストランで、
何か美味しいものが 食べたいね?」
「そ、そうだね」
と、彼が、どもったのは、お金の
心配をしたからではない。
「メニューが読めるかな?」
と、不安になったのだ。しかし、
今、ここでメニューが読めないなんてカッコワルイ
ことは言いたくない。Jクンは、度胸を
決めてレストランへ彼女をエスコートした。
席に着くと、彼はおもむろに
メニューを指さした。
しゃべれなくてもオーダーはできる。
ところが、出てくるものはスープばかり。
彼女は、「えっ! またスープがきたの?」
と不満げに彼を見る。
Jクンは、「給仕だって教えてくれれば
いいのに!?」
とうつむき加減に、ふたたび
メニューを開いた。
「よし、今度は、この店の一番下のやつを頼めば、
それなりの料理が出るだろう...」
ところが、彼がメニューを見せながら
注文すると、ギャルソンは、笑いながら
「ノン」
を、繰り返すばかり。
「いや、これが食べたいんだ」
と、Jクンがしつこく指を差すと、そのギャルソンは、
紙のコースターを取り出してみせた。
よく見ると、そこには、メニューの下に
書いてあるのと、同じスペルがあるではないか!?
店を食べさせろ! と言われて、
ギャルソンも、困ったわけだ...。
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「タイタニックのまねするシニアカップル」
「炊いた肉」
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【えっ! いまだに居るの!?
フィンガーボウルを飲んじゃうヤツ...?】
知らずにフィンガーボウルのお水を
飲むなんて、いまさらそんな失敗する
はずない、と思ったら甘い。
OLのK子さんは、友達と2人で、
シンガポール旅行へと出かけた。そこでなんと、
地元のお金持ちの御曹司と知り合ったのだ。
目元すずやかでに微笑んで...。
「私の家に、いらっしゃいませんか?」
というお誘いに、
一も二もなくOKした2人である。
「もしかして、シンデレラになれる?」
「私の白馬の王子様よ!」
2人は、瞳に星を輝かせて、勝手な想像を巡らせ
ながら、ウキウキ・ソワソワと、彼の豪邸に招かれた。
しばし歓談の後、彼の家族と一緒にディナー
となった。本日のメインディッシュは、カニ。
ひととおりカニ料理が出たところで、それぞれの前に
ガラスボウルが置かれた。中身は冷たそうなウーロン茶。
彼が、家族の家族に気に入られようと懸命に愛想を
振りまいていた2人は、すっかり喉がカラカラに
なっていた。
「間違いなくウーロン茶よね?」
2人は、目と目で確認しあい、同時にそれを
飲み干してしまった。
しまった、
しまった、
島崎ワカコ。
と、2人の正面に座っていた彼の妹の視線が
ジッと2人に、クギヅケになっている。
そして、ゆっくりと、
その器の中に指を入れると、チャプチャプと
洗い出したではないか!?
「ひょっこりひょうたん島・
波をチャプチャプ チャプチャプ かきわけて...♪」
「これって、もしかして、やっぱり
フィンガーボウルなの?」
「イエース!」
と、答える彼の目は笑っていた。
しかし、肝心の彼のお母様の目は、明らかに
軽蔑の眼差しだった。
この瞬間に、2人の夢はガラガラと
音を立てて崩れ落ち、デザートもそこそこに、
すごすごと、ホテルへ帰って
ヤケ酒に浸る乙女たちであった...。
「後藤真希 サイコスリラー映画・マーガン」(2023年)
備考:この内容は、
1994-1-5
発行:河出書房新社
著者:ユーモア人間倶楽部
「旅の大ドジ編・
世にも恥ずかしい人々2」
より紹介しました。