飛行機のトラブルも相次ぎました。
飛行機が着陸する際、前輪が出て
いなかったという事故もありました。
後輪だけを使って、胴体着陸をして、
幸いケガ人は、1人も出なかったそうです。
乗客と乗務員の皆様は、さぞや
安堵されたことでしょう。
ご無事で何よりでした。
でも、「飛行機に乗るのは絶対にイヤ!」
と思っている人も
いるかもしれません。
かくいうわたしも
飛行機は大ッキライです。

どうして? 若い頃、ヒコウ少年だったからです。
さんざんヒコウしたので、
飛行は、もうたくさんなのです...。
潜伏期間30年中は、飛行機で
全国を旅するなんて 夢のまた夢でした。

近場は、マイカーで、遠いところは、
夜行列車に揺られて巡業する日々だった
からです。いつか飛行機で全国を
飛び回りたいと密かに思っているだけの
「きみまろ」でした。

おかげで、ありがたいことに、
いまでは全国からライブの要請が
あるどころか、ロサンゼルス、ハワイ、
韓国...と、世界各地からも お声が
かかるまでになりました。

そうなりますと、どうしても
飛行機に乗らないわけにはまいりません。
昔は憧れていた飛行機ですが、
ほんとうは「キライ」「コワイ」などと、
駄々をこねるわけにもいかない
身となってしまったのです。

以前、韓国の飛行機に乗った
ときのことです。回りはみんな、韓国の
方ばかりでした。知っている人は
誰もいません。

水平飛行に移りましたら、アナウンスがありました。
「本日は大韓航空機124便に
ご登場くださいまして、まことに
ありがとうございます。
当機の機長はペ、副操縦士はビョン、
客室を担当いたします私は
チェ、でございます。ソウルまでの
2時間30分、どうぞごゆっくり
おくつろぎくださいませ」

知っている人は誰もいないと
ばかり思っていましたら、聞き覚えのある
方々の名前が出てくるでは
ありませんか...?
ヨンさまらしき人に
イ・ビョンホンみたいな人、さらには
チェ・ジウではないかと思われる人までも
いらっしゃったのです。
チェさんに、
「くつろいで」と言われたら、
ひねくれ者で、毒舌のわたしでも、さすがに、
夢心地になってしまいます。
でも、わたしは、飛行機はやっぱり苦手。
とある年の9月には、
こんなこともありました。
その日、わたしは、羽田発最終便で
鹿児島へ向かうことに。折悪しく、
台風が襲来。でも、飛行機は勇気をもって離陸。
上に下に、右に左に
揺れながら飛行しておりました。

「え~、本日は当機にご搭乗
くださいまして、まことにありがとう
ございます。まずは、皆様と本日、
運命を共にいたします、わたくしども
乗務員をご紹介させていただきます。
わたくしは機長を務めます
落田(おちた)でございます。福操縦士は土子似田(どこにだ)、
客室乗務員は逸田(いつだ)、名瀬田(なぜだ)、
由礼田(ゆれた)、打目田(だめだ)、井矢田(いやだ)
ほか5名でございます。
名前は全員、このうえなく
個性的ですが、能力は全員、いたって
優秀です。
ですから、皆様、どうか
ご安心ください。われわれは、こんな名前を
しておりますが、まだ一度も
落ちたことがございません。

わたしたちが落ちたのはただ1つ。
去年、受けた運転免許の試験だけで
ございます。車は運転できなくても、
飛行機は操縦できる「落田」が責任を持って
皆様を無事に目的地までおとどけいたします」
生きた心地がしない機長の挨拶でした。
また、ある時、国際線で
こんなこともありました。ビールにワイン、
ウィスキーにシャンパンと、
派手に飲んでいた2人組。なにやら酔いが
回って、口論に...。

「なんだ、おまえ。バカヤロー、
このヤロー、表にでろ~!」
お願いですから、ドアを開けないでね、
と思ったのは、わたしだけでは、ないはずです...。
備考:この内容は、
2010-3-17
発行:PHP研究所
著者:綾小路きみまろ
「1つ覚えて3つ忘れる中高年」
より紹介しました。
