その翌日、こんどは山田のほうから、
連絡が入った。
私に「ポケモン島」、もとい、
「獄門島」 もとい、
「黒門島」とかいう何回聞いても、難解な、
南海の孤島について
調べてほしいという。
きゃは!
どういうコトー!?
ボケ、かましすぎよ!
本来なら、多忙な
私が、
「ジョジョの奇妙な冒険」もとい、
「ジョージアの新CM」 もとい、
「ジョシュアのひとりごと」もとい、
「鈴木奈穂子アナ」もとい、
「宮崎奈穂子」もとい、
「山田奈穂子」
ジョシュ(助手)の調べ物などに、かまけて
いる暇は無いのだが、実は、私自身もその
島には、少なからず興味を引かれていたのだ。
きゃは!
Qちゃん、冒頭
ボケが、多すぎて、
ツッコミどころ、野村萬斎よ!
先日、入手した例の媚薬だが、
その元となる植物は黒門島にのみに
見られる種であることが分かった。昨日の
臨床実験では効果はまったく現れなかったが、
強靭な精神力を持つ私だからこそ
薬物の幻想に勝ってしまったとも考えられ、
まだ研究の余地を残していた...。
しかも、最近、島では植物が次々と枯れたり、
岸壁が崩れて海に沈んだりと、
異変が続いているらしい。中には、
”島が○にかけている”とまで
いう科学者も
いるほどだ。これは物理学者としても
なかなか興味深い現象である。
ところで、いったい山田は、なぜ、
そんな島のことを知りたがったのか?
もちろん、貧乳女のことなど、どうでもいいのだが、
どうしても、相談に乗って
ほしいと、懇願するので、仕方なく話を
聞いてやった。
山田は、16年前事故で○くなった
父が、突然目の前に姿を表した、と馬鹿な
ことを言う。詳しい状況を聞き出した私は、
一瞬にして何者かによって
仕組まれたそのトリックを見破ってしまった。
あまりにも、くだらないので、
その解説をすることは避けよう。
それにしても、バカ山田は、この程度の
仕掛けに騙されるとは情けない。
しかし、バカなだけに放っておいたら
この女は、何をしでかすかわからない。
数日後、またふらりと私の研究室に
やって来たかと思うと、いきなり声を
あげて泣き始めた。そして、
「上田先生様、
今まで水虫で、魚の目のワタシの面倒を
見てくださって、ありがとうございました。」などと、
殊勝なことを言い、それっきり姿を消して
しまったのだ。
しまった、しまった、
島崎和歌子。
こまった、こまった、
小松未歩。
もちろん、心配など
してもいなかったのだが、翌日、山田の
母親・里見さんと偶然出会い、
話を聞くことになった。
里見さんたち親子は、もともと黒門島の出身で、
島では代々伝わる
「カミヌーリ」と呼ばれる巫女の家系だったという。
そして、島を守るために巫女
として生まれた女は、決められた相手と結婚し、
決められた儀式をしなければ
ならないというしきたりに縛られていた。
しかし、里見さんは儀式の直前、
奈穂子の父にあたる剛三氏と駆け落ちをし、
以来2度と、島には戻っていないのだった。
さらに、里見さんはこう続ける。
その後、事故で○くなった剛三氏の
○の原因は、他ならぬ奈穂子がつくった。
そして、奈穂子には本物の霊能力が
あるのだと...。
ここまで聞いた私は、いま一度
山田に会うべきではないかと考えた。
山田が
何かしらの力を持っているとすれば、
研究対象として十分価値がある。
そう、あくまで”研究対象”としての価値だ。
断じて個人的感情から
助けに行くわけではない...。
備考:この内容は、
2002-11-30
発行:学習研究社
著者:上田次郎
「どんと来い、超常現象」
より紹介しました。