落語界には、ダジャレを先輩に仕掛けては
ならないという不文律がある。しかし、
そこは人情、浮かんだダジャレを、どうしても
言いたくて抑えのきかないこともある。
(解説:不文律とは、
明文化されていないルールのこと。)
雪の日に、師匠が転んだのを見て、
ユキダオレと言った弟子は、
クビになりかけたという。
歯の悪い師匠が、ヤキトリと格闘していた。
ダジャレの浮かんだ弟子は、
どうしてもそれが、言いたくてしょうがない。幸い
師匠は上機嫌。しかし、おそるおそる、それを
仕掛けた。
「師匠、それは、よく噛んだ方がいいですよ」
「そうかい?」
「ええ、レバカメと言いまして...」
そのあと、悲惨なことになったという。
いま、気がついたか「出歯亀」というのは、
まだ生きている言葉だろうか?
アナウンサーやキャストにも、ダジャレ
好きの人がいる。ほほえましく聞くことも
あるが、体外 ムッとする。あまりにもベタ
だったり、ひねり過ぎたりで、多くは楽しさ
が伝わらないのだ。なのに、当人は連発する。
共演者やスタジオの客が、お追従(ついしょう)笑いを
するからなのだが、彼らがつまらないとか、
やめろといえない立場なのをいいことに、
ほとんど野放し状態なのだ。
とりわけて、日テレの午後のワイドショーに
よく出ていたK氏がひどい。この人、
皇室の番組も持っていて、その中でダジャレを
飛ばしたら、その巧拙はさておき
評価するのだが...。
ダジャレ好きは圧倒的におじさんが多い。
連発するおばさんには、まだ、出くわしたことが
なく、ひょっとすると、家でやってて、
家族が七転八倒してたりして...。
(クマモン八倒)
よってブレーキのきかなくなる人も
よくいる。もうダジャレのアメアラレで迷惑
この上もないが、あまりにもつまらない
ダジャレには、武士の情けで聞こえないフリをして
差し上げる。
だって、箸を持って、「橋幸夫」ってな
ことを言うんですから...。
ところが、おじさん、
聞こえないと思ったか、「ハシユキオ」を
3回も言うんですね。言う方も
聞く方も切ないよ、これは...。
テレビやラジオの番組タイトルも
ダジャレが多い。
『高島ひでたけのおはよう!
中年探偵団』(ニッポン放送)と、
『開運! なんでも鑑定団』(テレビ東京)は
同類だし、
『ザ! 情報ツウ』(日本テレビ)は、
情報通しか考えられず、意外や、あのオカタイ
NHKにダジャレタイトルが多いのだ。
BSに『一魚一会』(いちぎょいちえ)があり、
はて『いろはに邦楽』は総合であったか教育であったか?
そう、『英語でしゃべらナイト』という
のもあった。
黒木瞳と言う芸名はダジャレだと言ったら、
彼女の大ファンである友人は、涙を
浮かべて抗議した。
池乃めだかや海野かつをと、
一緒にするなと。
海野かつを、懐かしいなぁ...。
備考:この内容は、
2010-4-20
発行:光文社
著者:立川談四楼
「声に出して笑える日本語」
より紹介しました。