長野県といえども、（失礼）大きな駅では
100kmまでの近距離きっぷは自動券売機で買う
ことになる。そして、JR会社間をまたがって、
乗車する場合、会社別のボタンを押して
乗車券を買わなければならない。
そのことから、松本駅では、
一夜にして、自動券売機に
「JR東日本」、
「JR東海」、
「JR西日本」、
の選択ボタンが現れたのだから、乗客は、
かなり混乱したに違いない。
その後、10年間は3社体制で、落ち着いていたが、
平成9年10月の北陸新幹線（長野新幹線）
高崎～長野間開業に伴い、さらにややこしい
事態が生じてしまった。
政府・自民党と、JR、地元との申し合わせで、
新幹線完成後は、並行する在来線をJRの
経営から切り離すということになり、信越本線の
軽井沢～篠ノ井間が、長野県などの出費する第3
セクターの「しなの鉄道」に移管されたのである。
松本駅では、上記3社の選択ボタンに加え、
「しなの鉄道」選択ボタンまで現れ、まさに
複雑怪奇な様相を見せた。
お年寄りなど、きっぷを買うときには、
まごついただろう。まあ、これだけ、複雑ならば、
お年寄りだけでなく政治家の先生方も、実際に
体験すれば、まごつくはずである。もっとも、彼らが
自分で、キップを買って電車に乗ることも
少なかろうから、これで、よいのかもしれないが...？
4つの会社に分かれてしまったとはいえ、
それぞれ連携しているので、不便はないが、
それでも、いくつかの弊害は生じている。
例えば、それなりの需要がありそうな、
飯田線の駒ヶ根や伊那市から新宿までの直通特急は
まったく運転されず、高速バスにして
やられっぱなしである。
飯田線がJR東海、中央本線（東線）が
JR東日本の経営ということが関係していそうだ。
JRから「しなの鉄道」への連絡乗車券も
限られた範囲でしか発売されていない。長野県内でも
発売されていない駅のほうが多いという。
運転面にも多少影響が出ている。平成
10年1月15日から16日にかけて関東・甲信越・東北
地方を襲った大雪で、JR東海の中央西線では
特急列車が位置昼夜立ち往生した。この時、救援が
遅れた理由の1つに、ラッセル用機関車の手配が
遅れたということがあった。JR東海には、
ラッセル用機関車が2両しかなく、普段、
雪の少ない中央西線には配備されていなかったのである。
現場に比較的近い長野や松本の基地には、
当然ながらラッセル用機関車は配備されている。
しかし、これはJR東日本の所有で自社管内の
路線の除雪を優先するだろう。
結果、救援が大幅に遅れたという、
なんとも情けない話。
このように、元が1つだったものを、
4つに分ければ、いろいろ問題も出てくる
というもの...。
本州のど真ん中に位置するというだけで、
長野県はワリを食ったようだ。
さて、北陸新幹線（長野新幹線）の長野から先、
石川県金沢市までの延長が、旧与党の
自民党政治時代に決定され、現在建設が進められている。
これが、完成すると、信越本線の豊野～直江津間
（正確な区間は未定）を、長野県・新潟県などが
出費する第3セクター鉄道に移管することを
地元は了承した。
政治家だけでなく、地元もバラバラ
事件が好きなようだ。
もっとも、県内の各地域が独立独歩、
県としてのまとまりに欠ける長野県だから、
それもうなずけるところではある...。
備考：この内容は、
2009-11-30
発行：KKベストセラーズ
「つい誰かに教えたくなる鉄道雑学」
より紹介しました。
