わたしにとって禁断の木の実とも
いえるカツラについて、お話しましょう。
でも、どうしてカツラが禁断の木の実
なんだって?
それは、カツラはわたしに
とって、非常に魅惑的な快楽だからです。
カツラなしにには、もう生きて行けない
カラダになってしまったのです。そこで、
わたしは、自然の法を犯して、アタマを偽装
する道を選んでしまったわけです。
残念ながら、咲いた花は、散ります。
登った山は下りなけらばなりません。
外見が、年齢とともに、ヨレヨレになっていくのは
自然の摂理です。若いときの
元気はどこへやら...。
昔ビンビン、いまペンペン。
昔ピチピチ、いまクシャクシャ。
昔フサフサ、いまツルツル。
足はガクガク、目はショボショボ、
おしっこチョロチョロ。
耳と同じくらいのイヤリングをつけ、
顔はシミ・シワ・タルミの
スクランブル交差点。年をとるということは
そういうことです...。
考えてもごらんなさい。リンゴだって
柿だって、熟れたら落ちるのです。
芸能人だって売れたら落ちるのです。
生えた髪の毛が落ちないわけがありません。
もうだいぶ落ちてきたなと、わたしが
悟ったのは、かれこれ10年近く前、郷里・
鹿児島の中学校の同窓会に出たときです。
なんと、担任の先生より、うすかったのです。
さすがのわたしも、これはマズイと
思いました。
しかし、きみまろは転んでもタダでは
起きない。ここからわたしは、人生に
積極的になっていったのです。開き直った
のであります。
実際、タダではありませんでした。
カツラは、けっこう値が張るのです。高い
ものだと7桁に達するものもあります。
カミングアウトをしてからは、かつらの
メーカーよりCM出演のお声を
かけていただきましたが、丁重にお断り
いたしました。そのころわたしはまだ、
わがオツムに
かすかなのぞみを持っていたのです。
最近のファンの方は、なかなか
ストレートな物言いをなさいます。
「ねぇ、きみまろさん、それ、
カツラなの? カツラ?」
平気で、おっしゃいます。
「こ、これはカツラではございません。ヒトの毛です」
「ほんとはハゲてんでしょ?
ねぇ、ねぇ、きみまろさん、
ハゲてんでしょ?」
なんとも身も蓋もないお問い合わせでございます。
ハゲてん、ハゲてんって、
ハゲてんは、東京は銀座にある天ぷら屋の老舗・
ハゲ天と相場が決まって
いるのです。
「たから」という立派な屋号がありながら、
初代の人がハゲていたばっかりに、
いつしか「ハゲ天」と呼ばれるように
なったのだそうです。ということは、
私もそのうち「ハゲまろ」なんて
いわれるようになるのでしょうか?
それだけはかんべんです。
ここで、チョット皆様にお知らせがあります。
きみまろの『爆笑スーパーライブ第2集!』
をお買い求めくださった方は
お気づきかもしれませんが、この
CDのジャケットの裏には、大きなツボに
後ろ向きに入っている男性の小さな
写真が載っております。
この男性のアタマ、これがまあ、見事な
ハゲっぷり。後光が射さんばかりに、
神々しいほど。まん丸お月さんも真っ青です。
これは、きみまろに違いないと、
巷でささやかれているかどうかはしりませんが、
これは実は、私では無いのです。
エッ? ややこしい言い方を
するなって? だから、私では無いのです。
この人は、撮影現場の近くで作業を
していた工事現場のおじさんです。
ちょっとお礼をして、撮影に協力して
頂いたのです。
この写真、ほんとうは、大きく載せたかったのですが、
CDを制作した会社の人に、
「それは、さすがにこの人に失礼だ。
かわいそうだ」と言われて、
あんなにささやかな写真になったのです。
エッ? やっぱりアヤしいって?
そこまで疑うなら、ほんとうのことを...
いえいえ、これ以上はやっぱり、
口が裂けてもいえません。
真偽のほどは、ぜひご自身で
ご確認ください...。
備考:この内容は、
2009-4-17
発行:PHP研究所
制作協力組版:PHPエディターズ・グループ
印刷所製本所:凸版印刷株式会社
著者:綾小路きみまろ
発行者:江口克彦
「妻の口 一度貼りたい ガムテープ」
より紹介しました。