【エディ・マーフィの天才を、
証明する、まさかのSF主演作...】
「デイブは宇宙船」
ある日、ニューヨークの小学生
ジョシュの部屋に、空から小さな
隕石が落ちてきた。
その3ヶ月後、
1人の黒人が、大地に降り立つ...。
デイブ(エディ・マーフィ)と、
名乗るその男は、ジョシュのもとに
やってきて、「隕石を渡してほしい」と、
頼み込むのだが、言動がなんだか
ぎこちない。
それもそのはず、
デイブは、豆粒のような大きさの
「ニル星人」たちが、大勢乗り込んだ
「ヒューマノイド型宇宙船」だったのだ。
隕石は、塩不足に悩む彼らが、創り出した、
地球からすべての海水を
吸い上げる装置であり、
予定通り海に
落ちなかったため、作動せずに
いたのだった...。
デイブの任務は、隕石を
海に投げ込むこと。だが、その場合、
地球は、●の惑星になってしまう...。
ジョシュや、その母親ジーナとの
交流を通じて、下等生物と思っていた
地球人の文化を理解するほど、
ニル星人たちは、任務と感情の間で、
悩み始める...。
エディ・マーフィは、過去に
あまりにも大成功した反動で、近年
苦悩を余儀なくされている
コメディアンである。
どんな映画に出ても
「どうせ、エディが、ひとりで
何役もやっていて、ギャグが、大味
なんでしょ!?」と、
観てもない奴に作品内容を、
決めつけられてしまう。
そんな手前勝手なエディ像を、
本作「デイブは宇宙船」は、
打ち消してくれるはず...。
とにかく、
ウェルメイドで、ハートウォーミング。
文化のズレを転化した知的なギャグも
満載の、本格的なSFコメディに
仕上がっているからだ。
たしかに、エディは、この作品でも、1人2役を
演じているけれど、宇宙船デイブと、
中で、それを指揮するデイブ
そっくりの船長の2役という趣向は、
ユニークだし、物語的にも説得力
がある。
また、瞬きをまったくせず。
ギクシャクした動きを取るだけで、
自分が、宇宙船であることを表現し
尽くすエディのパフォーマンスは、
弱冠19歳で、「サタデー・ナイト・
ライブ」のエースに抜擢された
天才ぶりを証明するものだ...。
脇役陣も、そんな彼をサポート。
神経衰弱に陥りエディ船長に反旗を
翻すナンバー2に、扮するのは、
後年、「ハングオーバー!
消えた花ムコと史上最悪の2日酔い」の
歯科医役で、ブレイクする
エド・ヘルムズだし、
船長を慕う女子船員役は、
「チアーズ!」のガブリエル・
ユニオンが好演。
また、ジョシュの母親ジーナを、
美人でありながら、
「40歳の童●男」などでは、
ヨゴレ役もこなすエリザベス・バンクスが
演じるなど、実力派で
固めている...。
だが、近年のエディ主演作では、
ピカイチの出来と、いえる本作も、
本国の興行収入は、イマイチ冴えなかった。
理由は、エディが、トップスターの
座から、転落するきっかけと
なった、映画史に残る大失敗作
「ブルート・ナッシュ」がSF映画
だったため、「エディ主演の
SFだと、誰も観ないんじゃないか?」
と、余計な心配をしたスタジオ側が、
タイトルを内容ズバリの
「Starship Dave」から
「Meet Dave」という
ボンヤリしたものに変えたせいで、
人々の興味を惹かなかったから...。
そんなわけで、邦題なんて
大抵、ロクなもんじゃないけれど、
本作に限って言えば、
正しすぎるくらいに、
正しいのである...。
備考:この内容は、
2012-8-21
発行:洋泉社
「~異次元SF映画100~」
より紹介しました。