【フランス最強の映画コンビが、
想像力の限界に挑んだ力作...】
『ロスト・チルドレン』
ジャン=ピエール・ジュネと
いう名前は、
今となっては、
『アメリ』(01年)の監督としてよく
知られているだろう。そう、配給・
宣伝の叶井俊太郎が、てっきり
グロ映画だと思って観る前に、
買ったら不思議チャンの乙女系映画
だった...
という逸話も有名な、
日本でも大ヒットした、あのフランス
映画である。
では、なぜ、グロだと
思ったのか?
もともと、ジュネは、
○戦争後の、パリ郊外にある○肉
精肉店を舞台にした黒い寓話
『デリカテッセン』(91年)で、
ブレイク
したダーク・ファンタジー系の
映画作家だから...。
その想像力を全開に
羽ばたかせた初期の力作が
『ロスト・チルドレン』である...。
作風を、簡単に形容すると、
レトロ・フューチャーな世界観の中に、
無垢な者たちが、轟く哀愁の見世物
小屋といった感じだろうか?
まず、本作は、『ヒューゴの不思議な発明』
(11年)でも、取り上げられた
フランスの元祖映像魔術師、ジュルジュ・
メリエスに捧げられている
のだが、
それは、『月世界旅行』(1902年)
の純粋な秘蔵トリックの
驚きと、喜びを正当に継承する
宣言とも、いえよう...。
そして、眠り病の
クローンたちや、シャム双○児など、
極めて個性的なキャラクターたち。
フリークス趣味という点では、
トッド・ブラウニングを連想させるが、
より決定的な影響関係を
結んでいるのは、
フェデリコ・フェリーニだ。
サーカスの怪力男ワン
(ロン・パールマン)は、『道』(54年)の
大道芸人ザンバノと、イメージが
重なるし、孤独な道化師たちの
住むところのシュールな人口美術や、
カーニバルな雰囲気は、まさに
フェリーニのゴシックSF版と
いったところ...。
イマジネーションを、
具現化する精度と、密度は非常に高く、
同じくフェリーニ・チルドレンの
テリー・ギリアムから絶賛を、
受けている...。
物語は、闇夜の港町で、
「1つ目教団」という新興宗教団体に
さらわれた孤児の男の子をめぐって、
彼を弟のようにかわいがっている
心優しき怪力男ワンと、途中で、
出会ったストリート・キッズの少女
ミエット(ジュリエット・ヴィッチ)
の創作活動が軸となる、
ゴツいおっさんと
ロリータ女子の凸凹カップルは、
『シベールの日曜日』(62年)の
主人公男性と少女なども
彷彿とさせるが、夢見る力を失った
マッド・サイエンティストの
クランク(ダニエル・エミルフォルク)に
象徴される邪悪さに満ちた世界で、
ワンとミエットのピュアな
交流が際立つ作りになっている。
この性善説にも届いたメルヘン感覚は、
のちの『アメリ』へと
延長されていく感じ...。
ところで、本作のクリエイション
における最重要人物を、まだ紹介
していなかった。
美術監督の
マルク・キャロだ。
彼は、ジュネ監督の
長年の相棒で、ずっと、「ジュネ&
キャロ」の名義で、活動してきた
のだが、
コンビ作は、これが最後に
なってしまった。
なんとも皮肉な
話だが、本作が、高い評価を受け、
2人そろって、『エイリアン 4』(97年)
に抜擢されたものの、キャロ
だけ、ハリウッドになじめず、降板
してしまったのである...。
結果的に、名コンビの
コラボレーションの頂点が
本作に刻まれることに
なったのだ...。
(森)
備考:この内容は、
2012-8-21
発行:洋泉社
「~異次元SF映画100~」
より紹介しました。
WiFiの乱れにより、
画像が、「大人げない」
結果になってしまった点、
お詫びします。
きゃは!
わざとでしょ!