「小さなことこそ大事にする」
ホテルオークラ東京会長 松井幹雄
私は、本をものすごくよく読むほうで、心に
響くものがあると、書き留めておくのですが、
そういう中で、結局、自分自身が変わり、
チャレンジしていかなくては、ダメだということが
わかるようになったのです。
しかし、それ以前に、私という人間が店主だと
思って仕事をするということです。
これは、うちの社員にもよく言うのですが、1人ひとりが
サラリーマン根性で、仕事をしていたら会社は
絶対によくならない。
魚屋のおやじは、
きょう売れ残らないようにするかを、
必○で考えている。
それは、自分が店主だからです。だから、
皆が店主になれば、会社は、ものすごく
強くなります。
私は、常にそういう意識でやっていますから、
些細なことですけれども、必要もないところで、
電気がつけっぱなしにしてあると、自分で消して
歩きます。商品を搬入するのに、扉を開けっ放しに
しているのを見ると、エアコンが抜けて
しまうのが、気になってしょうがない。
そういう精神は、先輩方が、代々築いてきた
伝統ですが、特に、元社長の野田岩次郎は、本当の
商人でしたね。私は、その人の下で
30年仕事をしてきましたが、”もったいない”
という言葉を、実によく使っていました...。
もったいないという言葉くらい日本人の
心に響く言葉はないと、私は思っています。
こういうニュアンスの言葉は、どこの国にもない
そうですね。
そういう気持ちが、社員にあると、
合理化だとか、節約だとか、そんなことを
いちいち言われなくて、自然に会社はよい方向に
進んでいくのです。
野田さんは、最も影響を受けた人ですが、
印象に残っているのが、私がまだ、宴会の予約係
だった頃、私のところに電話がかかって
来ましてね...。
きょう自分が紹介したお客様が、
婚礼の相談でお見えになる。値引きを要求される
だろうが、
君たちが一所懸命つくったプランを
まけるのは忍びない、だから一番コストの
低いところだけまけろ、と...。
それを聞いて、この人は、大変な人だなと
私は、思いました。要するに、小さなことこそ
大切にしろ、と言うのが、野田さんのおっしゃり
たかったことだと思うのです。
松下幸之助さんも、
大きなことは、グチャグチャ言わなかった
けれども、細かいことは、とことん言ったと
いいます。
大きなことは慎重にやるから、そう失敗
しないが、細かいことは安易に考えて見過ご
しがちなのですね。それが、商売では、一番
ロスが大きいのです...。
商売というのは、結局、小さいものの、積み
重ねなんです。だから、苦労して、つくったものを
簡単にまけてしまう営業は、やっぱり
駄目だと思います...。
備考:この内容は、
令和4-3-25
発行:致知出版社
監修・発行:藤尾秀昭
「1日1話、読めば心が熱くなる
365人の生き方の教科書」
より紹介しました。