その完成された設計に、元来のメカ
好き少年の血も刺激された。とはいえ、
あくまでも、林道ツーリングがバイクライフの中心
にあったのは変わらなかった。
カブ趣味が高じるきっかけを得たのは、
仕事の関係で山梨の実家に帰ってからだ。
東京のアパート住まいと違って、バイクが増えても
置き場所には困らない、北にカブがあると
聞けば軽トラックで引き取りに行くなど、
積極的にカブを買い集めるようになる。
そのとき、集めたカブは、バラバラだったり、
動かない状態だったりするものの、今も実家に
残してあるという。
S山さんが、「バイクと言えばカブばっかり」
になったのは、現在(平成13年)
の住まいに住居を定めた
7年ほど前から。
都内のマンションとはいえ、
屋根の下にバイクが置ける環境を手に入れた
ことが大きい。
あまり大きい声では言えないが、
職場に数台のカブを置いておける環境も
これを手伝った。また、インターネットが
身近なものとなり、メーリングリスト
(=ネット上での同好者連絡網)へ参加するなどして、
カブ好きの仲間がたくさんいることを知った。
自然と繋がりができていき、
「火がついちゃった」という。
ホンダがツインリンクもてぎで開催
しているエコのパワー競技=エコランは、1Lの
ガソリンで、どれだけの距離を走れるかを競う競技だ。
エコランと聞けば、高専生などが取り組む
空力や軽さを
追い求めた未来的な手作り3輪車を思い浮かべるが、
S山さんが参加しているのは、市販車クラス。
これは、スーパーカブそのままの姿で、
燃費を競う競技で、s山さんあは、
'97年から4年連続で出場している。
「安いエントリーフィーもてぎを
走れるのなら」と思ったのだが、
参加のきっかけ。
しかし、準備を進めるうちに、生来の
凝り性の虫がうずき始めた。どうせ、走るのならよい
成績を収めたくなってきて、マシン造りにも
(M子さん)を抜擢するなど、本格的に
取り組んでいった。
それでも、OHVエンジンをマシンに選んでいる
あたりはS山さんのこだわり。最初の年は135km/L、
翌年は155km/L、一昨年は、残念ながら
ミッショントラブルでリタイヤしたものの、
OHCを
選択した前回は、250km/Lと、記録を順調に
伸ばしているが姿が、なんと羨ましい限りだ。
ベトナムにもM子さんと出かけた、年に一度
くらいの割りで、ほかにもタイや、イタリアなど
海外にで出けたりしているらしく、ベトナム行きも
その一環。
S山さんは、カブを見に、M子さんは
料理の趣味を高めるためと、それぞれ違いも
楽しみを尊重しながら、一緒に楽しんで
しまおうという旅行だった。。。
「ベトナムへ行っても、ただカブが並んで
置いてあるだけだったら面白くない。
人が一緒にいるから
面白いんですね。カブの横で物を売って
いたりして、生活に密着してるす姿が見られる、
そういうのがいいんです。
S山さんと話していると「生活」という
言葉がよく出てくる。たとえば、ベランダでも、
植物を育てたり、七輪を使って肉屋魚を焼いた
りして食べる。そんな日常のなかでの、
ちょっとした楽しみを喜びに変えるのがS山さん
流であり、カブを楽しむことも生活を彩る
要素のうちの1つなのかもしれない。
とはいえ、そこにとどまらないほどに、
S山さんのカブ趣味は深い、一度、凝りだすと、
トコトンまで行ってしまう性格が発揮されて
しまって?いる。
「何にでも興味を持ってしまうので、気を
つけてハマらないようにしています」
と、笑う今は、自転車に魅了されかけて
いて、ヤバイ状態であるようだ。
「カブしかやってないというと、狭い範囲
のなかでしか、遊んでいないように思われる
かもしれませんけど、やり始めるとホント
いろんな楽しみ方ができますよ」
メカの面白さに、ひたれるのをはじめ、
何より人間とのかかわりを演出してくれるカブ。
年長者との交流はもちろん、10代、
20代の若者と
同じ視点で話が出来ることも大きな喜びだ。
ホームページを開いていることもあって、
その輪は、少しずつ広がっている。S山さんの
カブ趣味は、これからも、「生活の一部」
として、いつまでも、マイペースで続けていく
ことだろう...。
備考:この内容は、
平成13-5-15
発行:八重洲出版
「MOTOR CICLIST」
より紹介しました。