オーディオ機器に関しては、何よりも音質が、
最優であるいう考え方は、決して間違って
はいない。むしろ、それは当然なことと
言えよう。
しかし、翻って、どういう音が
良い音なのか? と言う問いかけに対して、明瞭な
イメージを持つことは、かなり難しいことでも
ある...。
自分が良い、あるいは好きと感じた音
なら、それでいいじゃないか!? ということも
一致するとは言えない。
その2つのモノの、板挟みの結果が、
カタログの検討になったり、経験者の
意見を聞くということになる...。
一方、現在のコンポの組み合わせで得られる音は、
音に対する一般水準の向上によって、是非が、
明瞭に指摘できないほど、立派なものになって
いる...。
このこと自体、大いに良いことなのだが、
これでは、モノ選びするにも、唯一の
手掛かりがつかみにくく、限りなき視聴の泥沼に
入っていってしまう...。
そこで、1つの方向転換をしてみよう。
それは、コンポを1つの工業製品として見る
ことから始まる。つまり、音楽を再現する道具と
して、コンポを見るのである。
これは、極端な例だが、
どんなに音の良いコンポでも、50日で
音が変になるようでは、工業製品としては落第
というわけだ。
また、人間が使うものだから、
それを、正しく使うために、間違いなくセット
しなければ、ならないところが、毎回10箇所も
あるようでは、音の問題に至る前に、望ましい
製品とは、言えなくなる。
一口に、かつ大づかみに
言えば、現在のオーディオ製品の選択
基準を、音質以外のどこに取るかと
いうことだ...。
一昔前は、製品の物理特性、つまり S/N比
とか、周波数特性、歪などが、選択基準の
パイロットとして、役立った。しかし、今日では
技術水準の著しい向上が、この手がかりも
実用的なもので、なくしてしまっている。
かつては、大いに活躍した、
「カタログの見方」が、今では、
少し趣きが変わってきたのも、その1つの
現れである...。
良い音、良い特性以外にも、コンポの見方は、
あるはずである。それに付いては、いまだ、
確立されてなく、受け取り方の
違いもあるだろう。
これから挙げる一連のチェックポイントは、
こんな見方は、どうだろうか?という
1つの提案である。だから、以下、述べる
チェックや見方に合格しなくても、それで
すべてが、判断できるわけではない。
それは、人間の人格が、「知、情、意」の
バランスで、成り立っているように、製品の
完成度を示すバランスの1つの面として、
受け取り、かつ利用して欲しい。
それとも、こうして危険を
避けて通るのは、あまりにも、
退嬰的(たいえいてき・何かに付けて尻込み
するさま)なことだろうか...?
文:土屋○
備考:この内容は、
昭和55-7-31
発行:音楽之友社
「オーディオ基礎知識」
より紹介しました。