今、思えば、単一性と多様性とは、相容れないものだ。
僕が以前、中国に対して持っていた、最大の誤解でもあった。
思うに、その原因は、僕が生まれ育った
社会環境にある。日本は、相対的に単一な国に
見えるからだ...。
「アイヌ民族」
だが、実際には、日本は「単一民族」ではない。
北海道周辺に住むアイヌ民族や、本土
から遠い沖縄県の住民は、「本土の人」とは、
まったく違う生活様式と、伝統を保っている...。
日本だって、決して単一社会では無いのだ。
たとえば、言葉。東日本の中心の東京と、
西日本の中心の大阪との間では、日本語にも、
わずかな違いがある。東京の方言は、一般的に
いわゆる「標準語」とされ、大阪エリアの住民の
言葉は、方言の一種「関西弁」と称される。
両者のアクセントは異なり、大阪の人は
だいたい「標準語」が話せるが、東京の人は、
「関西弁」を話せない。これは、ちょうど、中国でも、
地方の人は「普通」(標準語。北京語
がベース)を話せるが、北京の人は地方の方言...
例えば東北方言・四川方言をかろうじて
聞き取れても、話せないのと同じだ。
日本の東北地方、九州地方の方言は、
他の地域の人とは話せないし、聞き取ることすら、
難しい場合もある。
それでも、中国各地の方言ほど、バラエティに
富んでいると、いうわけではない。中国の
地方の方言、特に福建省や広東省、上海市も
含めた南方の言葉は、僕には、おそらく一生
かかっても、聞き取れない、日本語と英語以上に
違うものだ。
「沖縄民族衣装」
また、東京の人と大阪の人は、お互いを
ライバル視し、双方の言葉にまで、攻撃を与える
のは、北京の人と、上海の人の関係に似ている。
東京の人は、大阪の人を「礼儀知らずで、
大ざっぱ」と非難し、大阪の人は、東京の人を
「ケチで、人情味がない」と、けなす。上海の人が、
北京の人に、北京の人が上海の人に抱く不満と、
そっくりで、これは、図らずも、日中共通の
特徴になっている。
生活習慣も、日本各地で違いが有る。
気候も飲食の習慣も、生活のリズムも違うからだ。
日本海に近い北陸地方は、お米も、日本酒も、
大変おいしい。冬になれば、積雪が、一番多い地域
となる。1mほど、雪が積もるため、
1F建ての家は、ほとんどない地域もある。
僕の実家がある伊豆は、冬は基本的に、
雪は降らず、気候は温暖。夏は暑くなく、冬は
寒くないので、他の地域の人は、伊豆に住む
人を羨んでいる。多くの人は、農業・漁業・
観光業に従事している...。
伊豆半島は、台風や地震が多く、火山も
あるので、独自の生活様式が生まれた。伊豆
から東京は、最速の新幹線に乗れば、1時間も
かからないが、両者の生活様式やリズムには
はっきりとした違いがある。
これだけを見ても、日本は決して、単一国家
ではなく、日本の社会も独特の多様性を
持っているのだ...。
備考:この内容は、
2011-3-20
発行:(株)ディスカヴァー・
トゥエンティワン
著者:加藤嘉一
「中国人は本当にそんなに
日本人が嫌いなのか」
より紹介しました。