【W1的なもの】
サスペンションは、ツアラーとしては前後
ともストローク不足。後ろは硬めである。
これは、プロポーションを、昔のバランスに合わせ
ようとしたためだと思うが、エンジンが素晴らしい
から、余計に気になってしまう。
聞くところによれば、ダブルクレードルフレーム
の2本あるダウンチューブの幅を狭くし、それに
伴って2本のマフラーの幅を、狭くという昔の
タイトな形へのこだわりは、かなりあったという
から、その辺、現代の性能も兼ね備えなくては
ならない点との、せめぎ合いが、いろいろ矛盾を
生んでしまうことに、なるのだろうか?
~~~~~~~~~~~~~~~~~
例えば、後ろまわりなどは、ずいぶん苦労
しているようだ。リヤサスのストロークを
伸ばそうとすれば、フェンダーとの隙間が大きく
開いて格好悪くなる。
特に、フロント19インチ、リヤ18インチの
昔と同じホイール径で、
後ろは今の太いタイヤを履くから、現状でも
少し後ろ上がりの印象を受ける。
W650 のデザインが、古典的なバイクに範を取っ
て全体にスリムにまとめ、ライトケース、
タンク、サイドカバーなどのバランスに気を
配り、いい線まで成功しているところは大いに
評価したい。
~~~~~~~~~~~~~~
また、鉄製サイドカバーなど、質感
豊かなバイクとして磨いても楽しいバイクを、
復活させてくれたことは、とてもうれしい。
ただ、もう少し、煮詰めて欲しかったのは、
またがった時の印象を決めてしまうフューエル
タンク。上から見ると、妙にポッタリしている。
太いメインフレームに 15L 容量のタンクと
なれば仕方がないかも知れないが、余計な貫禄
が出てしまっていて、タンクとエンブレムの
ボリュームがなんとも、すがすがしくない。
このあたり、そのプロフィールよりも、またがった
ときは小さく感じるというトライアンフの
新型ボンネビル900は W650と対照的で、つばを
抑えたバイク造りというが、歴史の違いを感じて
しまう。つまりは、真のクオリティーの
問題なのだが...。
~~~~~~~~~~~~~~
だいたい、この手のバイク造りの一般的手法は、
エンジンを他から流用して、お手軽に
作るのが、お決まりである。それも、原付きや、
スクランブルーなどの、お手軽なジャンルで。
つまり、お遊びの域を出ないのが、レトロバイクの
作られ方であった。しかし、W650は、675cc の新エン
ジン。スーパースポーツでは、ないにしろ
相応の性能が求められる。それなのに、カワサキは
こういうバイクをよく造ったものである。
(エライ!)。
ある意味で各社が競う最先端の
スーパースポーツモデルを設計するより、よほど
難しいしいことではなかったかと思う。
確かにW650は、先鋭化をたどったスーパー
スポーツバイクの世界が、置き去りにしていった
W1 的なものを、この規則だらけの現代バイク
界においても、なお強く求めているように
思えた...。
備考:この内容は、
平成13-5-15
発行:八重洲出版
「motor cyclist」
より紹介しました。