そう簡単に実現できない未来を、
描いた作品はどれだろうか?
最近、感じる。マンガや特撮が描いた ”未来” に、
どんどん追いついていくなぁ、と。
例えば、『ウルトラマン』の第23話「故郷は地球」は、
過酷な環境の星に置き去りにされた
宇宙飛行士ジャミラが、怪獣と化して地球に帰り、
復讐と悲しみの大暴れをするという
話だった。
ウルトラマンは、やむなくジャミラを倒し、科学特捜隊は、その墓を建てる。
その墓碑には、こう刻まれていた。「A JAMILA(1960~1993)」。
あの未来の香り漂う『ウルトラマン』の舞台は1993年だったのか!?
もう 20年以上も前だよ。
『北斗の拳』で、世界が○の炎に包まれた199X年も、とっくに過ぎたし、
鉄腕アトムの誕生日は 2003-4-7だった。
『未来少年コナン』で、世界の半分が、海に沈んだのは2008年で、
『新世紀エヴァンゲリオン』で、碇シンジらが戦ったのは2015年。
こう考えると、作品世界の未来に追いつくどころか、追い越して未来が、
いつの間にか、過去になっている!
「さぁ~びす、さ~びすぅ~」
これは、ウカウカしていられない。
そこで、考えよう。
現実世界とまだまだ壁があり、
科学的な意味で「遠い」と考えられるのは、
どの作品が、描いた未来なのか...?
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第⑥位 「鉄腕アトム」
ロボットが人間と一緒に学校に通う!
冒頭に書いたように、アトムが生まれたのは2003年。しかし、アトムのようなロボットは、
まだ生まれていない。パワーは、10万馬力、ジェット噴射で空を飛び、目からサーチライトを照射、
お尻からマシンガンを、ぶっ放し・・・いや、そんなロボットがいては、たいへん困る。
いま考えたいのは、アトムの人工知能だ。
お茶の水博士は、アトムに人間らしい心を学ばせるために、小学校に通わせた。アトムは、学校で、
「学年で一番学術優秀、品行方正」と表彰され、「オール10点」の成績表を
もらっていた。
ロボットは、一度インプットしたことは忘れないし、悪いことをしてみたいという欲求もたぶん
ないから、当然こうなるだろう。ところが、悪いクラスメートが、その成績表を焼却炉に
投げ込んでしまう。アトムは、火の中に飛び込むが、間に合わなかった。
ひどい...。
アトムに、同情しながらも、考えさせられるシーンである。
なぜ、ロボットが学校に通うのか?
データをささっと、コピーすればいいのでは?
という気がする...。
だが、そのコピーするデータには、最初の1セットが必要だ。
人間は、まだ人間のことを完全に理解しているとは
言えないから、ロボットが人間と暮らすのに必要なデータの集大成を、
人工知能に作るのは困難だろう。
すると、少なくとも、その第1号は、
人間と倉科がら、データを蓄積するしか
ないかもしれない...。
う~む、それほど遠くない将来に来るかも知れませんなぁ。
ロボットが人間と一緒に
学校に通う日が...。
問題は、それを人間の子どもや親が、どう受け入れるか?
クラスに100点しか取らない生徒がいる。だが、そいつは人間ではない・・・。
「アトム」でも、たびたび描かれていた
問題だが、試されるのは人間ですな...?
備考:この内容は、
2016-3-25
発行:(株)KADOKAWA
著者:柳田理科雄
「空想科学読本 17」
より紹介しました。