第4位 「銭形平次」
時代劇でも、さまざまな変わった武器が使われる。
木枯し紋次郎は爪楊枝。
水戸黄門の弥七は、風車。
『必○』シリーズの、三味線屋の勇次は、
三味線の糸。
この時代の人々の特徴は、
身の回りの日用品や商売道具を、
武器にすることだ。
その意味で、最も手に入りやすいものを武器に
していた物語は、『銭形平次』であろう。
主人公の平次は、ゼニを投げる!
それは、「寛永通宝」という鉄製のコインで、真ん中に四角いANAがあり、
当時、両替屋に行って、
銭100枚分の大きなお金を出すと、数え賃を引かれて、
97枚ほどの銭を紐に通したものと、
交換してくれたという。
両端が結び玉になっていて、その結び玉は、銭がひとりでに抜けることは
なく、しかし、抜こうとすれば、すぐに抜く事ができる絶妙の大きさだった。銭形平次も、
この銭の紐をいつも懐に入れていて、必要あらば、そこから銭を外して投げていた。
オープニングでは、「今日も決め手の銭が飛ぶ」などと歌われていたが、決め手となることは
少なく、もっぱら下手人の動きを止めて、捕縛するのに使われていた。寛永通宝にも種類があり、
平次が投げていたのは、3.5gのものとされている。10円玉が4.5g、5円玉が3.75gだから、
なんとそれらよりも軽い。
これでは、下手人を、ビックリさせるぐらいしかできないのでは・・・?
と思っていたら、1967年の映画『銭形平次』では、平次の銭が恐るべき威力を見せた。
これは、平次が目明かしになったいきさつを描いた映画で、
当初、平次は不真面目な鳶職人だった。
賭場で丁半を争っていたところ、役人が踏み込む。
平次は、すわっとばかりに銭を投げ、直径
3cmほどのロウソク2本を、上下に切断した!
これは、驚くべきことだ。
銭でロウソクが切れるのか?
再び、実験。体重計に載せたロウソクに10円玉を押し付けて、かかった力と、めり込んだ深さ
から計算すると、直径3cmのロウソクを、完全に切断するためのスピードは、なんと
時速1300km = マッハ1.05。
こんな超音速の銭が、こめかみにでも当たったら、狭い側面の面積に衝撃が集中し、頭蓋骨に
めり込むのではないかと思われる。平次がその気になれば「今日も決めて」にすることはもちろん、
下手人を、その場で○刑することさえも 可能だったのだ!
前述したように、寛永通宝には、いくつかの種類があり、金額も1文銭と4文銭があった。
平次が投げたのは4文銭で、現在の貨幣価値で80円。
安いけれど、すごい武器ですね・・・。
備考:この内容は、
2016-3-25
発行:(株)KADOKAWA
著者:柳田理科雄
「空想科学読本 17」
より紹介しました。